I-Method

6-19 最終処分5

最終処分の資金繰り



 最終処分場を設置するには2つのハードルがある。1つは、立地する自治体や住民との合意形成であり、もう1つは建設資金である。
 上記の図では、最終処分場の資金繰りを初期(建設中)、中期、終期の3期にわけて考えている。
 初期には、コンサルタント会社(設計会社)が中心となり、金融会社やゼネコン(建設会社)のバックアップで資金繰りを行う。ここで失敗すれば、借入金と不良資産の土地だけが残ることになる。金融会社は銀行とは限らない。ノンバンク、商社、ゼネコン、物流会社、不動産投資会社、政治家など、さまざまな事業者が最終処分場の利権に群がる。投資額は立地条件や構造にもよるが、1万立方メートルあたり約1億円である。

搬入権の前売り

 コンサルタント会社は、銀行融資以外の資金繰りの手段として、搬入権の前売りを行うことがある。搬入権を購入するのは将来の顧客となる中間処分場である。
 ゴルフ場会員権の前売りが社会問題となったように、もしも処分場の設置許可が下りなければ、搬入権は紙くずとなる。そのリスクとオープン時までの利息が割り引かれるため、一般的に搬入権は正規の料金の5割引程度になる。搬入権は処分場からコンサルタント会社に一括譲渡され、そこから複数の中間処分場や収集運搬業者に分割して販売される。一種の金融商品のようなものなのだが、金融商品取引法の規制は受けていない。
 処分場がオープンすると、搬入権を購入した処分場の廃棄物が殺到するが、これはもはやキャッシュを生み出さない。しかも、処分場側は搬入を断れないので、埋立物の品質が悪化することが多い。なかには前売分をさばくために、容量を無許可で拡大する処分場もある。とくに素掘りの穴にすぎない安定型処分場で無許可拡大が多く見られる。

前金、補償金

 最終処分場がオープンして数年が経ち、借入金の返済が順調に進むと、経営的には安定期になる。最終処分場は売り手市場なので、強気の経営が可能になる。一般的に、産廃業界の処分料の決済は3ヶ月程度の手形で行われることが多い。しかし、強気の最終処分場の中には、手形を受け取らず、則月払いや、前金払いを要求することも多い。さらには、処分料とは別に保証金を要求することもある。保証金は名目上は預かり金だが、実際には契約金とみなされて返済されない。
 さらには、最終処分場の営業窓口を独占するブローカーが暗躍し、契約仲介リベートを要求することも珍しくない。リベートの相場は1立方メートル500円、あるいは1kg1円と言われる。

マニフェスト偽装、無許可拡張

 残存容量が10%を切ると最終処分場は終末期となる。処分場を延命するために、マニフェスト上は処分したことにして、実際には他の処分場に回してしまう不正が行われることもある。他の処分場が無許可なら不法投棄、許可があっても再委託違反+マニフェスト虚偽記載である。
 さらに埋立物を移動したり、処分場区域を無許可拡大する不正が行われることもある。これも不法投棄である。
 国内で発見されている50万トン超級の超大規模不法投棄事犯の半分以上が、最終処分場の無許可拡大である。
 最終処分場の容量拡大や第二、第三処分場の許可がおりにくくなっていることが、こうした不正行為の背景となっている。最終処分場単独のビジネスモデルでは、事業を継続できない時代となっているのである。

先頭のページ 前のページ 次のページ 末尾のページ
I-Method Webセミナーへのへのご意見・ご提案・ご感想をお待ちしております。