I-Method

6-2 収集運搬1

3つの収集運搬の業態

 収集運搬単独で、積替保管なしという業態は、数の上ではもっとも多い産業廃棄物処理業の業態で、およそ10万社あると言われ、処理業者数の約9割を占める。
 トラック運送業(青ナンバー)の許可を取得するには、運搬車両が5台以上必要だが、収集運搬業の許可には台数の制約がないため、ダンプ1台の個人事業主も多い。
 一方、収集運搬には、積替保管ありという業態があり、これがない場合とはまったく違った業態構造になる。
 さらに、中間処理業や最終処分業の許可を持っている業者も、たいていは収集運搬業の許可を併せて取得している。
 このように、収集運搬業は、単純収集運搬、積替保管あり、処分場ありの3つの業態があるといってよい。
 そして、この3つの業態で、収集運搬のキャッシュフローもまったく異なるものになってくる。

料金の問題

 収集運搬業には、さまざまな問題があるが、最大の問題の一つは、料金が標準化されていないということである。
 収集運搬の料金は、1台いくらというおざっぱな見積もりであることが多く、運搬重量も運搬距離も関係がない。1台いくらというのが、いつでも誰でも同じならまだいいが、顧客によって倍以上に差があったりする。高いのか安いのか、標準がないからわからないというのが、収集運搬の実態なのである。

 収集運搬単独の事業者なら、最終的に残ったキャッシュを見れば、利益が出たか出なかったかわかる。いわゆるドンブリ勘定(※)である。
 ところが、処分業や他の事業を兼業していると、決算をしても、果たして収集運搬業で利益が出ているのかどうかわからないという、困った事態になる。
 これは請求した料金が原価を上回っているかどうかが、わからないからである。

 運送業の許可があれば、運行管理者の配置が義務付けられているが、収集運搬業者の多くは白ナンバーであるため、運行管理者がおらず、運送業の基礎的な知識すら持ち合わせていない。
 したがって、運送業者に作成が義務付けられているタリフ(標準運賃表)も、収集運搬業者は作成しておらず、タリフという言葉すら知らないことも少なくない。
 タリフがないのでは、顧客に請求している収集運搬料金が適正かどうかわかるはずがない。
 もとより、これではキャッシュフロー分析もやりようがない。

タリフ(標準料金表)のための原価計算

 そこで、収集運搬業で、どのようにしてタリフを作ったらいいのか検討してみたい。
 収集運搬業者がタリフを作成するために必要な原価データは、次の4つである。
 (1)総走行時間
 (2)総走行距離
 (3)総運搬重量
 (4)総運搬原価

 総運搬時間は、全車両の走行時間の合計である。タコメーターがあれば、走行時間は正確にわかるが、ない場合は、運転日誌の出社時刻と帰社時刻から求める。お昼休みは1時間などと仮定すればよい。
 総走行距離は、タコメータがなくても、出社時と帰社時のトリップメーターの数値を記録しておけばよい。
 総運搬重量は、トラックスケール(台貫)で記録している場合は正確にわかるが、ない場合は、マニフェスト記載数量などを用いる。マニフェスト記載数量が体積の場合は比重換算する。比重はときどき計測して標準化しておくことが望ましい。
 総運搬原価は、車両費、燃料費、高速道路料金、運転職員給与、駐車場料金などの直接費の合計に、販売費・一般管理費などの間接費を賦課したものである。

 まともな会社なら、これら4つの原価データは、かならず作成されているはずである。
 それにもかかわらず、タリフが作成されていないということは、単に知識がないというにすぎない。

 4つの原価データから、タリフの作成に必要な原価指標は、次の3つである。
 (1)平均走行速度 = 総走行距離 ÷ 総走行時間
 (2)平均重量原価 = 総運搬原価 ÷ 総運搬重量
 (3)平均時間原価 = 総運搬原価 ÷ 総走行時間

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※ドンブリとは、丼のことではなく、商人が使う前掛けについたポケットのことだそうである。カンガルーの袋みたいなやつだ。ここから現金を出し入れするだけで、帳簿を使わない商売をドンブリ勘定と言うらしい。

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