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6-16 最終処分2

最終処分場の総キャッシュフロー

 最終処分が収集運搬や中間処理と決定的に違うのは、物理的な寿命があらかじめ定まっており、総キャッシュフロー(施設の寿命がつきるまでのキャッシュフロー)が計算できるということである。
 収集運搬であれば車両の回転数、中間処理であれば施設の稼働率によって、同じ設備でも総キャッシュフローは異なってくる。さらにメンテナンスや事故によって施設の寿命は大きな誤算が生じる。法律改正によって施設の寿命がつきることもある。
 しかし、最終処分場の総キャッシュフローは、次の公式で単純に決まる。

 式1 総キャッシュフロー(コストぬき) = 総容量 × 処分単価

 一方、総コストのほうは次の公式で単純に決まる。

 式2 総コスト = 建設費 + 支払利息 + 維持管理コスト×埋立期間

 これらの公式にあてはめる数値は、処分場の建設時にすべて予定することができる。つまり、最終処分場の総キャッシュフローは建設時に計算することができる。
 この計算が狂う最大の波乱要因は処分単価の変動だが、これまで最終処分単価が大きく下ブレすることはなかった。つまり、最終処分場はきわめて安定したビジネスモデルだということになる。

 もう1つの波乱要因は、道路事情や住民協定により、一日の搬入台数が制限されることである。むしろ、この影響のほうが深刻である。搬入台数が少なくなれば、借入金の返済期間が延長され、金利負担や維持管理コストが増え、トータルのフリーキャッシュフローが減少する。搬入台数が極端に制限されたのに、借入金返済計画が変更できないと、単年度赤字あるいは単年度資金ショートということもありえる。

 三番目の波乱要因は、事故である。最終処分場といえども事故の確率はゼロではない。しかも、最終処分場で事故が起こると、数十万トン、数百万トンの埋立物の全体に影響が及び、莫大な改善費用がかかることがある。事故の確率は小さいが、事故が起こったときに損害額は大きいのである。このため、事故時の改善費用として内部留保の積立てが義務付けられているが、それで足りるかどうかはわからない。一部の損害保険会社から、最終処分場保険も発売されているが、違法性のある事故については、担保されない場合が多い。

最終処分場のジレンマ

 最終処分場は、安定型、管理型、遮断型の3タイプしかなく、中間処理やリサイクルのように多様性がないため、処分料金はコモディティ化(無差別商品化)している。最終処分コストを負担する側からすると、処分料金は収集運搬料金と最終処分料金の合計となる。この合計額での競争が起こるため、運搬距離に応じて収集運搬費が増額し、最終処分費が減額する。
 東京近郊の管理型処分場の場合、処分料金の合計額が1トン3万円、収集運搬料金が5千円、最終処分料金が2万5千円程度である。
 遠方の処分場の場合、収集運搬料金が1万5千円なら、最終処分料金は1万5千円になる。さらに遠方の処分場なら、最終処分料金はさらに下がる。収集運搬料金が1トン3万円を超えれば、最終処分料金はマイナスになってしまうので、ビジネスとして成立しなくなる。

 最終処分場は寿命が決まっている。埋め立てを急げば、短期の単年度のキャッシュが増え、借入金を短期に返済することで、金利負担を軽減できる。ただし、最終処分場の寿命は短くなる。回収した資金で次々と新たな処分場を建設できれば問題ないが、最近は処分場の新設が住民の反対運動で難しくなっている上、最終処分量の全体的な縮小で需要が先細りしているため、最終処分場が永遠に続くビジネスモデルであるとは言えなくなっている。
 このため、埋め立てのスピードを緩め、寿命を延ばす最終処分場が増えている。この場合、不足するキャッシュを補うため、中間処分場併設することになる。中間処分場を併設することにより、受入品目を飛躍的に増やすことができ、埋め立ての前処理として廃棄物を縮減することにより、キャッシュフローの増大と最終処分場の延命の一石二鳥を実現することができる。
 埋め立てを急いで処分場を早くキャッシュ化するか、それとも延命して他の方法でキャッシュを稼ぐかは、最終処分場の究極のジレンマである。

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