I-Method

6-10 中間処分2

収集運搬兼業のジレンマ

 中間処分業には、5つの経営テーマにかかわる5つのジレンマがある。その最初は、中間処分専業でいくか、収集運搬業を兼業するかというジレンマである。

 コアコンピタンス(主業集中)という観点からは専業、多角経営という観点からは兼業ということになるが、そんなに簡単な議論ではない。
 多くの中間処分場が兼業を選択しているところを見ると、兼業のメリットのほうが大きいように思われる。
 兼業のメリットは、
  1 収集運搬費を上乗せすることで、客単価を向上できる。
  2 収集運搬込みの見積もり(契約)を望む排出業者が多い。
  3 入荷物の品質を向上させることができる。(他社運搬だと、何が持ち込まれるかわからない。)
  4 処理施設の都合に合わせ、ジャストインタイム(最適タイミング)の収集運搬ができる。
  5 顧客をグループ化して定期回収(ミルクラン)ができる。
  6 処分費一括受納、中抜きなどの収集運搬のうまみが、中間処分との兼業で大きくなる。
 数え上げると、こんなところである。どれも重要なメリットである。

 収集運搬業の兼業には、直列型と独立型がある。直列型とは自社の処分場への収集運搬をもっぱらにする兼業であり、独立型とは他社の処分場への収集運搬をもっぱらにする兼業である。上のメリットのうち、1〜5は直列型のメリットであり、6は独立型のメリットである。

 兼業のデメリットもある。
  1 収集運搬費は顧客から値切りられやすく、利益にならない。
  2 車両の稼働率が落ちると、車両費、運転手給与、駐車場費などのコストが回収できず、経営の圧迫要因になる。(余剰人員をかかえることになる。)
  3 収集運搬は処分よりも従業員一人当たりの生産性、収益性が低いことが多い。
  4 駐車場敷地が必要になるため、限られた敷地しかない場合は、中間処分専業のほうが敷地を有効に利用できる。
 これらのデメリットはどれも深刻で、実際、収集運搬部門が収益の足をひっぱっている業者は少なくない。

 実際には、中間処分の専業業者は、専業であることのメリットの大きい一部の大規模中間処分場に限られている。

在庫のジレンマ

 在庫を増やすべきか減らすべきか、これは産廃処理の特有のジレンマである。積替保管場と同様、中間処理でも在庫はキャッシュフローを生み出す。したがって、短期的には在庫が増えれば手元資金が増える。あるいは在庫には金融的な効果がある。受注金額ベースで5000万円分の在庫を持っているということは、銀行から5000万円借りているのと同じである。
 しかし、長期の在庫は適正処理が不可能な不良在庫となる。大量の不良在庫を抱えると、
 1 本来の保管場所を超えて廃棄物が処分場敷地を占有し、場内がせまくなり、見た目もきたなくなる。
 2 施設の稼働率が低いことが原因の不良在庫は、さらに稼働率の足をひっぱり悪循環となる。
 3 飛散や悪臭によって周辺住民から苦情が来る。
 4 行政から検査で指摘を受け、指導や処分の対象となる。
 5 事故リスクが高くなる。
 6 長期の在庫により、廃棄物の性状が変質してしまうと、不法投棄現場と同然になる。
といったさまざまな問題を生じる。

 中間処分場にとって適正在庫の維持は、きわめて大きな重要性を持っている。逆に言えば、処分場のよしあしは、在庫管理状況を見ただけでわかる。
 在庫は少なくてもいけないし、多くてもいけない。中間処分場の稼働率を最適化する適正在庫量があるのだ。
 在庫が直接キャッシュを生み出す金融効果がある産廃処理業は、他の分野よりも在庫管理が特別に難しい。

 「ザ・ゴール」で有名なエリヤフ・ゴールドラット氏の生産管理論は、Iメソッドの開発においても大いに参考になっており、座右の書といってもいいくらいだ。同氏のどの著書のテーマも、つきつめていけば在庫管理であるといえる。最高傑作とされる「ザ・ゴール」では仕掛品在庫が最適化され、最新著の「ザ・クリスタルボール」では配送センター在庫が最適化される。
 トヨタ生産方式(ジャストインタイム方式、かんばん方式)を開発した大野耐一氏の着眼点も、仕掛品在庫の管理だった。(むしろ、大野氏の理論がゴールドラット理論の原点である。)
 さらに、コンビニエンスストアチェーンと一般の小売店の最大の違いは、POS(販売時点管理システム)によって、店舗ごとの倉庫を持たないジャストインタイムの集中配送を実現するシステムにあるといえる。
 これらを見ると、どのジャンルにおいても、在庫管理は経営を改善し、革新するための中心的なテーマであることがわかる。
 IM−P(Iメソッドプロフェッショナルバージョン)が在庫にこだわるのはそのためである。

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