I-Method

6-1 IM−Pとは


 IM−P(iメソッド・プロフェッショナルバージョン)の主眼とするところは、産廃処理業者のキャッシュフロー分析である。

 キャッシュフロー分析とは、一言で言えば「キャッシュフロー計算書」を用いた財務分析の手法である。
 キャッシュフロー計算書は、損益計算書、貸借対照表に次ぐ第3の財務諸表と呼ばれることがあるが、日本では有価証券報告書を提出する上場会社にしか作成が義務付けられていないため、産廃処理業者の多くは作成していない。したがって、IM−Bが分析に用いている産廃情報ネットの公開データでも、キャッシュフロー計算書は公開されていない。

 もっとも、キャッシュフロー計算書は、損益計算書と貸借対照表があれば、ある程度まで導き出すことができる。実務的にも「間接法」によるキャッシュフロー計算書は、損益計算書を修正して求めている。損益計算書の利益額を出発点として、減価償却費や売掛金のように、実際のキャッシュの動きが異なる費目を調整し、税金や配当金を控除して企業の手元に最終的に残る資金(フリーキャッシュフロー)を求めるのが、間接法である。
 これに対して、「直説法」は、現金の出納を直接集計することによって、フリーキャッシュフローを求める方法である。
 どちらの方法でも、最終的な結果は一致する。


 産廃処理業者は、そもそもキャッシュフロー計算書を作成していないので、IM−Pがキャッシュフロー分析を行うといっても、経営学や会計学で一般的に通用しているキャッシュフロー計算書分析手法を用いることができない。
 もっとも、キャッシュフロー分析の一般的な手法の多くは、アメリカで開発されたものなので、企業風土や金融風土の違う日本では、あまり役に立たないことが多い。

 直接金融(銀行融資によらず、投資家から直接事業資金を集める金融)が主流のアメリカでは、投資家に対する情報開示を目的として、投資に対するリターンを分析する財務分析手法が発達した。
 日本の企業会計原則では、発生主義が現金主義よりも優れたものとされ、企業の利益は「営業利益」か「経常利益」で評価するのが通例になっている。アメリカでは、営業利益のかわりにEBITDA(税金、支払利息及び減価償却費控除前利益)を使うのが通例になっている。これは減価償却費控除前営業利益に相当し、キャッシュフローを生み出す直接的な企業力を表している。
 日本では、税引前の当期純利益を最終的な事業利益とすることが多いが、アメリカではNOPAT(税引後事業利益)を用いるのが一般的で、これは株主や銀行などの資金提供者に対する配当原資を表している。
 NOPATから資本コスト(支払利息・配当金)を控除したものがEVAで、企業に残るフリーキャッシュフロー(内部留保)を表している。
 このように、アメリカでは、投資家への情報開示を意識したキャッシュフロー会計が、会計風土として定着している。
 税金を利益に対する課税として最後に控除する日本と、収益を得るための必要経費として早めに控除するアメリカの違いも大きい。(ただし、アメリカの脱税率が日本の脱税率より低いわけではない。アメリカの脱税率(10%程度)は日本の2倍という推定もある。ちなみにイタリアと韓国は日本の4倍(20%)以上と言われているが、あくまで推定である。)

 これに対して日本では、投資家保護の観点というより、銀行の融資資料として、キャッシュフロー計算書の作成が求められることが常識となりつつある。これは、手持ち資金ショートによる黒字倒産を防ぐことが主たる目的である。
 短期資金調達の方法として、手形金融が常識化している日本では、手持ち資金ショートの主な原因は、売掛債権回収期間の長期化、もしくはデフォルト(手形不渡り)である。


 さて、長々とキャッシュフロー分析について解説したが、IM−Pの開発目的は、既成のキャッシュフロー分析の手法も取り入れながら、産廃処理業者に特化したキャッシュフロー分析手法を確立することである。本稿の基礎編3章の1〜5で詳しく論じたとおり、産廃処理には3つの特異な商品特性がある。このことは、ひいては産廃処理業のキャッシュフローの特異性の要因になるのである。
 したがって、IM−Pを理解するには、もう一度3章を復習しておく必要がある。産廃処理の3つの商品特性は何かと問われて、即答できないようであれば、基礎編3章を読み返してから、次に進んで欲しい。

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