I-Method

法改正要綱4−2


【要綱】廃棄物処理施設の適正な維持管理を確保するための措置廃棄物処理施設に係る定期検査

二 維持管理積立金制度に係る規定の整備

 維持管理積立金の取戻しができる者として、特定廃棄物最終処分場の設置者であった者及びその承継人を追加すること。

【解説】

 特定廃棄物最終処分場の承継人が維持管理積立金の取戻しをできることとした規定である。
 承継人の範囲としては、設置者であった者、設置者であった者の承継人、設置者であった法人が解散し、承継法人がない場合には、設置者であった法人の役員であった者が想定されている。
 相続人や土地所有者が承継人になれるかは、明文の規定がないので、解釈が分かれるところである。
 承継人による維持管理積立金の取戻し権は、要綱第四の三(改正法第十九条の七第六項及び第十九条の八第六項関係)による承継人の維持管理義務と見合いであるので、もしも相続人や土地所有者が承継人になるとすれば、相続人には維持管理義務も生じることとなる。
 廃棄物処理法は、相続人や土地所有者に対する措置義務の承継を認めていないので、本改正においても、相続人や土地所有者が維持管理積立金の取戻し権や維持管理義務を承継するものにはなりえないのではないかと解するが、これは異論がありえる。
 相続人や土地所有者による維持管理積立金の取戻し権を認めなかった場合、取戻し権をめぐる紛争や訴訟が頻発するような気がする。
 なお、維持管理積立金の取戻し権を有するものがない場合、維持管理積立金は国庫に帰属することとなると解する。

【改正条文】

(維持管理積立金)
第八条の五
6 特定一般廃棄物最終処分場の設置者又は特定一般廃棄物最終処分場の設置者であつた者若しくはその承継人(これらの者が法人である場合において、当該法人が解散し、当該特定一般廃棄物最終処分場を承継する者が存しないときは、当該法人の役員であつた者を含む。)は、維持管理積立金の積立てをしている特定一般廃棄物最終処分場について埋立処分の終了後に維持管理を行う場合その他環境省令で定める場合には、環境省令で定めるところにより、当該特定一般廃棄物最終処分場に係る維持管理積立金を取り戻すことができる。


 廃棄物処理施設の設置の許可の取消しができる場合として、特定廃棄物最終処分場の設置者が維持管理積立金の積み立てをしていない場合を追加すること。

【解説】

 当然の規定であるように思えるが、そうでもない。
 維持管理積立金の積み立てをしていない場合に、いきなり許可取り消しをすると、法人にその後の措置をする原資がなくなってしまう。
 したがって、改善命令、施設の使用停止、事業の停止などを命じて、できるだけ自主的な改善を求めた上で、それでも維持管理積立金の積み立てをしない場合に、許可取り消しをすることが現実的であり、実効性もある。
 本改正法は、許可取り消しだけを規定しているのではなく、このような弾力的、あるいは段階的な処分を当然に含んでいるものと解したい。
 また、維持管理積立金の積み立てをしていない特定廃棄物最終処分場の資産を差し押さえることができるような規定をおけば、さらに実効性が高まるのではないかと思われる。

【改正条文】

(許可の取消し)
第九条の二の二
2 都道府県知事は、前条第一項第一号、第二号若しくは第四号のいずれかに該当するとき、又は特定一般廃棄物最終処分場の設置者が第八条の五第一項の規定による維持管理積立金の積立てをしていないときは、当該一般廃棄物処理施設に係る第八条第一項の許可を取り消すことができる。

(許可の取消し)
第十五条の三
2 都道府県知事は、前条第一号、第二号若しくは第四号のいずれかに該当するとき、又は特定産業廃棄物最終処分場の設置者が第十五条の二の四において読み替えて準用する第八条の五第一項の規定による維持管理積立金の積立てをしていないときは、当該産業廃棄物処理施設に係る第十五条第一項の許可を取り消すことができる。


 市町村長又は都道府県知事は、特定廃棄物最終処分場の維持管理に係る生活環境保全上の支障の除去等の措置を自ら講じた場合には、当該特定廃棄物最終処分場に係る維持管理積立金を設置者等に代わって取り戻すことができることとすること。

【解説】

 措置命令に基づいた行政代執行を行った場合、現行法でも、維持管理積立金を差し押さえることが可能であると解されるが、本改正により、民事執行手続き(差し押さえ)によらずに、維持管理積立金の取り戻しを可能としたものである。
 当然の規定であると言える。

【改正条文】

(生活環境の保全上の支障の除去等の措置)
第十九条の七
6 第一項の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じた場合において、当該支障の除去等の措置が特定一般廃棄物最終処分場の維持管理に係るものであるときは、市町村長は、当該特定一般廃棄物最終処分場に係る第八条の五第六項に規定する者(以下この項において「設置者等」という。)及び機構にあらかじめ通知した上で、当該支障の除去等の措置に要した費用に充てるため、その費用の額の範囲内で、当該特定一般廃棄物最終処分場に係る維持管理積立金を当該設置者等に代わつて取り戻すことができる。

第十九条の八
6 第一項の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じた場合において、当該支障の除去等の措置が特定産業廃棄物最終処分場の維持管理に係るものであるときは、都道府県知事は、当該特定産業廃棄物最終処分場に係る第十五条の二の四において読み替えて準用する第八条の五第六項に規定する者(以下この項において「設置者等」という。)及び機構にあらかじめ通知した上で、当該支障の除去等の措置に要した費用に充てるため、その費用の額の範囲内で、当該特定産業廃棄物最終処分場に係る維持管理積立金を当該設置者等に代わつて取り戻すことができる。

【省令素案】

 最終処分場の設置者又は最終処分場の設置者であった者若しくはその承継人(これらの者が法人である場合において、当該法人が解散し、当該最終処分場を承継する者が存しないときは、当該法人の役員であった者を含む。)は、維持管理積立金の積立てをしている最終処分場について埋立処分の終了後に維持管理を行う場合その他環境省令で定める場合には、環境省令で定めるところにより、当該最終処分場に係る維持管理積立金を取り戻すことができる(法第8条の5及び第15条の2の4)。
維持管理積立金を取り戻すことができる場合は、都道府県知事により最終処分場の廃止の確認を受けた場合又は維持管理積立金を積み立てるべき額が負数となった場合とする(現行規則第4条の13第1項)。
埋立処分の終了後に維持管理を行う場合であって、当該維持管理に要する期間が1年を超えるときは、その1年間に行おうとする維持管理に必要な費用の額に限り取り戻すことができる(現行規則第4条の14)。

(1) 最終処分場の設置者であった者又はその承継人等が維持管理積立金を取り戻す際の手続(現行規則第4条の13第1項及び第4条の14関係)
@ 法第8条の5第6項及び第15条の2の4で定める環境省令で定める場合に、設置許可が取り消された最終処分場について維持管理を行う場合を追加する。
A 規則第4条の14の維持管理を行う場合に、設置許可が取り消された最終処分場について維持管理を行う場合を追加する。
B 最終処分場の設置者であった法人が解散し、当該最終処分場を承継する者が存しない場合における当該法人の役員であった者及び最終処分場の設置者であった者の承継人(当該者が法人である場合において、当該法人が解散し、当該最終処分場を承継する者が存しないときは、当該法人の役員であった者を含む。)は、当該最終処分場について積み立てられた維持管理積立金の額を照会することができることとする。

(2) 取戻しの申請(法第8条の5第6項及び第15条の2の4関係)
@ 最終処分場の設置者であった者又はその承継人(これらの者が法人である場合において、当該法人が解散し、当該最終処分場を承継する者が存しないときは、当該法人の役員であった者を含む。)が維持管理積立金の取戻しの申請を行う場合には、以下の事項を記載した申請書を提出しなければならないこととする。
(申請事項)
・ 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
・ 最終処分場の許可の年月日及び許可番号
・ 最終処分場の設置の場所、埋立地の面積及び埋立容量
・ 取り戻そうとする維持管理積立金の額及びその算定の基礎
・ 申請の理由
A 申請書には次に掲げる書類を添付するものとする。
(添付書類)
・ 維持管理の内容を記載した書面
・ 経費の明細書
・ 維持管理を行うことを証する書面
・ 申請者が最終処分場の設置者であった者又はその承継人(これらの者が法人である場合において、当該法人が解散し、当該最終処分場を承継する者が存しないときは、当該法人の役員であった者を含む。)である場合にあっては、その旨を証する書面
・ 申請者が法人の役員であった者である場合にあっては、当該法人が解散し、当該最終処分場を承継する者が存しないことを証する書面7
7 許可が取り消された者又はその承継人から当該最終処分場が移転していないことを証する書類として、当該最終処分場の登記事項証明書が考えられる。

先頭のページ 前のページ 次のページ 末尾のページ
棄物処理法の改正公布(5月19日)


I-Method Webセミナーへのへのご意見・ご提案・ご感想をお待ちしております。