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法改正要綱7−4−1


【要綱】産業廃棄物処理業者による委託者への通知

1 産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物の処理を適正に行うことが困難となり、又は困難となる事由が生じたときは、当該処理を委託した者に通知するとともに、当該通知の写しを保存しなければならないこととすること。

【解説】

 処理困難通知に関する改正は、通知義務にとどまるだけなら、恐れるに足る改正ではない。しかし、次項の処理困難通知を受けた管理票交付者の措置義務を定めたことで、恐ろしい改正となった。

 省令素案を見ると、処理困難通知を要する場合として、不可抗力である施設の故障、業者の自己都合である事業の廃止、行政処分である業務停止や許可取り消し、さらに欠格要件該当まで、想定されるあらゆる事態が網羅されている。しかし、このように網羅的な規定にしてしまったことによって、次項の措置義務が想像を超えて過酷な規定になってしまう。

 処理困難通知義務の対象には1つの疑義がある。それは処分業者の不良在庫の取り扱いである。
 処分業者が管理票に処分日を記載して回付し、排出業者が処分費を支払えば、民法上の契約は終了したことになる。しかし、実際にはまだ処分が終らず、不良在庫として残ってるということは往々にしてある。
 実務的に、処分業者は廃棄物の処分に着手した日を処理票に記入する処分日としており、処分が終った日を処分日とはしていない。たとえば焼却処分場では、焼却物として仕分けした日を処分日としており、焼却が終った日を処分日とはしていない。大型焼却炉の場合、どの廃棄物がいつ燃えきったなど、わからないからである。
 したがって管理票に記載された処分日と、処分が実際に終った日とは異なっているのが通例である。
 管理票は処分済みとして回付されているのに、実際には不良在庫となっている廃棄物まで、処理困難通知の対象にすると、次項の措置義務の範囲が際限なく拡張することになる。処分業者は数万トンという大量の不良在庫をかかえたまま倒産したり、許可を取り消されたりすることが往々あるからである。

 私は、このような不法投棄と同然の大量の不良在庫まで、処理困難通知の対象にすべきではないと考える。しかし、環境省の見解はきっと違うだろう。地方自治体も、きっとできるだけ措置義務の対象範囲を広く解釈しようとするに違いない。
 そうなると、この法改正は、処分業者の不慮の事故、自己の都合、違法行為のすべてにわたって、処分業者の責任に帰すべき不良在庫まで、排出事業者に際限のない措置義務を課す脅威の条項になってしまわないかと、大いに懸念している。

 逆に言うと、本条の改正によって、排出事業者は、処理業者の不正行為だけではなく、不良在庫までモニタリングすることを求められているのである。

【改正条文】

(産業廃棄物処理業)
第十四条
13 産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、現に委託を受けている産業廃棄物の収集、運搬又は処分を適正に行うことが困難となり、又は困難となるおそれがある事由として環境省令で定める事由が生じたときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該委託をした者に書面により通知しなければならない。
14 産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、前項の規定による通知をしたときは、当該通知の写しを当該通知の日から環境省令で定める期間保存しなければならない。

(特別管理産業廃棄物処理業)
第十四条の四
13 特別管理産業廃棄物収集運搬業者及び特別管理産業廃棄物処分業者は、現に委託を受けている特別管理産業廃棄物の収集、運搬又は処分を適正に行うことが困難となり、又は困難となるおそれがある事由として環境省令で定める事由が生じたときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該委託をした者に書面により通知しなければならない。
14 特別管理産業廃棄物収集運搬業者及び特別管理産業廃棄物処分業者は、前項の規定による通知をしたときは、当該通知の写しを当該通知の日から環境省令で定める期間保存しなければならない。

【省令素案】

(1) 現に委託を受けている産業廃棄物の処理を適正に行うことが困難となり、又は困難となるおそれがある事由(法第14条第13項及び第14条の4第13項関係)
法第14条第13項及び第14条の4第13項の環境省令で定める事由は、次のとおりとする。
@ 故障、事故
故障、事故等により、事業の用に供する施設(積替え又は保管の場所を含み、運搬車及び運搬船を除く。)が稼働しなくなったことにより、保管量が法定の上限に達したこと。
A 事業の廃止
産業廃棄物処理業又は特別管理産業廃棄物処理業の事業範囲の全部又は一部を廃止したこと。
B 施設の休廃止
法第15条第1項に規定する産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた施設により受託した産業廃棄物を処理している場合において当該許可に係る施設を廃止したこと、又は当該許可に係る施設を休止したこと。
C 欠格要件該当
産業廃棄物処理業者が、禁錮以上の刑に処せられたこと、廃棄物処理法等の規定に違反し罰金の刑に処せされたことその他法第14条の2第3項の規定により都道府県知事への届出が義務付けられている欠格要件のいずれかに該当するに至ったこと。
D 埋立終了(最終処分場の場合)
埋立処分を受託した場合であって、法第15条第1項に規定する産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた最終処分場に係る埋立処分が終了したこと。
E 行政処分
次の行政処分を受けたこと
・ 法第14条の3(第14条の6の規定により準用する場合を含む。)の規定に基づく事業停止命令
・ 法第15条の2の7の規定に基づく産業廃棄物処理施設の使用停止命令
・ 法第15条の3の規定に基づく産業廃棄物処理施設設置許可の許可取消処分
・ 法第19条の5の規定に基づく措置命令
次の行政処分を受けたことにより、保管量が法定の上限に達したこと。
・ 法第15条の2の7の規定に基づく産業廃棄物処理施設の改善命令
・ 法第19条の3の規定に基づく改善命令

(2) 通知手続(法第14条第13項及び第14条の4第13項関係)
法第14条第13項及び第14条の4第13項の通知は、以下のとおり行うものとする。
@ 産業廃棄物処理業者は、(1)の事由が発生してから10日以内に、委託者に書面で通知しなければならないこととする。
A 通知には以下の事項を記載しなければならないものとする。
・ 産業廃棄物処理業者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名
・ 事由の内容(事業の廃止及び施設の休廃止の場合にあっては、変更前及び変更後の内容が明らかになるように記載すること。故障、事故、埋立終了の場合を除き、根拠条文を明記すること。)
・ 事由の発生日

(3) 通知の写し保存期間(法第14条第14項及び第14条の4第14項関係)
法第14条第14項及び第14条の4第14項の環境省令で定める期間は、通知をした日から5年間とする。

(4) 次項で説明

(5) 電子通知
処理困難通知の発出及び当該通知の写しの保存は、電子ファイルで行うことを可能とする。

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棄物処理法の改正公布(5月19日)


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