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法改正要綱9


【要綱】廃棄物を輸入できる者の拡充

 廃棄物を輸入できる者として、国外廃棄物を他人に委託して適正に処理することができ、当該国外廃棄物を国内において処分することに相当の理由があると認められる者を追加すること。

【解説】

 これまでは自ら処理できる事業者しか、国外廃棄物を輸入できなかったが、レアメタルや貴金属を含む使用済み携帯電話などの廃電子機器の輸入を拡大するため、委託処理を前提とした輸入を認めるように規制緩和したものである。これによって携帯電話会社などが国外で回収した使用済み機器を直接輸入することが可能になる。

 廃棄物を輸入するにはバーゼル条約(国内法はバーゼル法)と廃棄物処理法の二重の規制を受けるが、両社は規制対象がことなる。
 バーゼル条約では、限定列挙された有害物質を含む廃棄物を規制対象として明確に定義している。廃棄物処理法には「廃棄物は不用物である」という意味不明の定義しかなく、実務的には無価物主義(行政)もしくは総合主義(判例)で廃棄物の規制範囲を解釈している。このため、無価物でも有害物質を含まなければバーゼル条約では輸入規制を受けない。逆に有害物質を含んでいても有価物なら廃棄物処理法の規制を受けないことになる。
 廃棄物処理法の規制は国際的な標準から逸脱しており、このダブルスタンダードが、様々な偽装輸出や不正輸出の温床となっている。たとえば無価物を有価物偽装や中古品偽装である。
 日本の法律は第1条に目的、第2条以降に用語の定義を規定していることが多い。用語の定義は辞書的に用語の意味を定義しているのではなく、法律の適用される範囲を定義している。例えば道路法第3条では、道路の種類を高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道の4種類に限定している。これは林道や農道が道路ではないと言っているのではなく、林道や農道は道路法の規制対象ではないという意味である。廃棄物の規制範囲を明確に定義していない廃棄物処理法は致命的な欠陥法と言うべきである。

 廃棄物の定義が曖昧なままで、輸入された国外廃棄物の委託処理が認められたが、国外廃棄物が廃棄物処理法上の廃棄物になるのかどうか、廃棄物になるとして一般廃棄物なのか産業廃棄物なのか、また終わりのない議論が展開されることだろう。

【改正条文】

(輸入の許可)
第十五条の四の五 廃棄物(航行廃棄物及び携帯廃棄物を除く。第三項において同じ。)を輸入しようとする者は、環境大臣の許可を受けなければならない。
2 前項の規定は、国その他の環境省令で定める者には、適用しない。
3 環境大臣は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 その輸入に係る廃棄物(以下「国外廃棄物」という。)が国内におけるその国外廃棄物の処理に関する設備及び技術に照らし、国内において適正に処理されると認められるものであること。
二 申請者がその国外廃棄物を自ら又は他人に委託して適正に処理することができると認められること。
三 申請者がその国外廃棄物の処分を他人に委託して行おうとする者である場合にあつては、その国外廃棄物を国内において処分することにつき相当の理由があると認められること。
4 第一項の許可には、生活環境の保全上必要な条件を付することができる。

【省令素案】

 輸入許可対象の拡大(現行令第6条の2、第6条の6、第6条の12及び第6条の15関係)
 事業者は、産業廃棄物の処理を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない(法第12条第6項)。
 産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物の処理を他人に委託してはならない。ただし、政令で定める基準に従って委託する場合その他環境省令で定める場合はその限りでない(法第14条第16項)。
 事業者は、その産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合には、環境大臣の許可を受けて輸入された廃棄物以外の廃棄物に限り委託することができる(現行令第6条の2第2号)。
 再委託の場合も同様とする(現行令第6条の12)。
 特別管理産業廃棄物についても同様とする(法第12条の2第6項及び第14条の4第16項並びに現行令第6条の6及び第6条の15)
 国外廃棄物の輸入をできる者として、国外廃棄物の処分を他人に委託して適正に処理することができると認められる者を追加したことに伴い、法第12条第6項及び第12条の2第6項の政令で定める基準(委託基準)において、自ら処理するものとして輸入許可を受けて輸入された産業廃棄物以外の産業廃棄物については委託することができることとする。
 法第14条第16項及び第14条の4第16項の政令で定める基準(再委託基準)において、輸入許可を受けて輸入された廃棄物については、再委託することができないこととする。

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棄物処理法の改正公布(5月19日)


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