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6-9 中間処分1

経営規模を拡大する中間処分場

 かつては最終処分場が、産廃処理業界を支配するガリバーだった。しかし、現在では様相が違ってきている。
 環境省(旧厚生省)が集計している産廃処理統計(2008年度)によると、全国の最終処分量は約2014万トンで、これは5年前の2分の1、10年前の3分の1、15年前の4分の1になっている。このトレンドでいくと、5年後の2013年には、1000万トン程度になっているかもしれない。これに対して産廃の総排出量は15年前から約4億トンで、ほとんど変化がない。最終処分場がシェアを落とした分を、中間処理・リサイクルが吸収したことになる。
 最終処分場が産廃処理の流れの末端にある巨大なダム湖なのに対して、中間処分場は小さな流れの合流点にある小さな堰である。しかし、この堰が数を増やし、規模を拡大し、さらに有効利用(リサイクル)のための揚水を始めたことによって、ダムへの流入量が劇的に減ってしまった。
 農村や山間に立地することが多い最終処分場が、地元住民の反対運動や許可取消訴訟などで、新規設置許可や拡張許可が難しくなっているのに対して、都市部の工業地域に立地することが多い中間処分場は、資金さえ調達できれば容易に経営規模を拡大できる。中間処分場は、かつては破砕専門、焼却専門、脱水専門の小規模単独処理施設が多く、経営規模もせいぜい10〜20億円程度だったが、2000年前後からの世界的な好景気、資源価格高騰、リサイクル法の整備、地球温暖化問題を契機とした環境ビジネスブームを追い風として、複数のプラントを組み合わせた総合処分場を建設する50〜100億円級の大型投資が進み、トップランナーの経営規模は、この10年の間に50億円、100億円、200億円と倍倍ゲームで拡大を続けている。
 さらに、異業種から産廃処理・リサイクル業への参入も相次いでいる。とくに、産廃の大量排出者である鉄鋼、非鉄、電力、リサイクル義務を負うことになった電機メーカーなどが、産廃処理・リサイクル業に垂直的に参入することが目立っている。もともと産廃業界とは近い関係にある建設業界からの転業や兼業、新事業への資本参加も多い。大手鉄鋼、非鉄、電気メーカーなどが、子会社を設立して直接参入すれば、初年度からいきなり売上高100億円級の業者が誕生し、業界シェアが大きく動くことになる。
 リーマンショック後のリセッションにより、2009年以降の産廃業界の投資は小休止となっているが、景気回復にともなって、再び投資が再開され、1000億円級の業者が誕生するのは時間の問題だと予想される。ただし、電力事業でスマートグリッド(多種小規模分散最適化)がブームとなりつつあるように、産廃処理についても、一方的に大規模集中化を進めていけばよいというものではないかもしれない。それぞれの地域の産業と地勢の特性に合った最適な産廃処理の構造化を検討する段階にきている。

中間処分場の業態

 中間処分場は、きわめて多彩な業態である。
 その分類は、主として受注する廃棄物の品目によって行われるか、もしくは処分方法によって行われている。
 品目による分類では、建設(解体)系、建設汚泥(無機汚泥)系、食品(有機汚泥、動植物)系、医療(感染性廃棄物)系、液物(廃油、廃酸、廃アルカリ)系、オフィス系(廃家電、廃家具、廃書類)などに分かれる。ただし、オフィス系は、産業廃棄物、一般廃棄物、もっぱら物、有価物、古物のどれになるのか、法的な区分が曖昧なままとなっている。
 処分方法による分類では、焼却系(溶融系)、破砕系(切断系)、圧縮系(梱包系)、選別系、脱水系、固化系、中和系、発酵系、造粒系などがある。最近は複数の処理方法を組み合わせた総合処分場が増えている。
 もうすこし大きな処理方法のくくり方として、縮減(減量化)、無害化、燃料化、再資源化といった分類もある。

中間処分場の最終処分場化

 縮減率(減量化率)とリサイクル率の向上により、最終処分場への外注率が減少し、中間処分場で処理が終結する廃棄物が増え、中間処分場が最終処分場化している。外注率0%(完全最終処分場化)を達成している中間処分場も登場している。
 廃棄物処理法上、最終処分は海洋投棄(ロンドン条約により禁止)と埋立処分の2通りしかないが、実質的にはリサイクルが第3の最終処分とみなされ、マニフェストE票(産業廃棄物管理票の最終処分確認票)の作成においても、リサイクルを最終処分とすることが認められている。産廃のリサイクル率が52.2%(同前統計)なのに対して、最終処分率は4.8%(同前統計)しかないから、実質的にはリサイクルが最終処分の主役になっていると言える。ただし、リサイクルされた再生品が売れ残って不法堆積や不法投棄されることもあるので、再生品が有効利用されるところまで管理できる包括的な法体系の再編が求められる。

 リサイクル率を高める秘訣は徹底した分別である。排出事業者がゼロエミッションを達成するには30分類以上が必要とされているが、中間処分場にとっても同じである。とくに廃プラスチック類は、硬質系、軟質系ごと、化学物質の種類ごとに分けると、10種類以上の分類になる。現在の機械選別技術で30分類はムリなので、手選別ラインの併用が必要となるが、これはコストアップの要因になる。サーマルリサイクル(熱源再利用)では、そこまでの精度が必要とされないので、手選別ラインを省略してコストを削減している処分場もある。
 分別された廃棄物は、それぞれの種類ごとに、多角的なリサイクル先へと売却、運搬される。輸出コストを差し引いても黒字になる金属、プラスチック、古紙などは、中国などに大量に輸出されている。
 なお、処理を受注した廃棄物が有価物だったからといって、未処理のまま売却すると、横領罪に問われることがあるので、注意を要する。この場合、処理委託契約書の備考に「委託した廃棄物にそのまま有効活用できるものが混入していた場合は売却可とし、廃棄物処理委託量から控除する。有効活用による売却収入は処分場に帰属するものとする。」といった一文を付記しておけば問題ない。
 最近では、中国から希少金属などを含む廃棄物を輸入する動きも出るなど、廃棄物の国際貿易が活発になってきている。2000年以前の廃棄物処理業はほぼ国内産業だったが、現在の中間処理・リサイクルは、国際的な産業として新たな発展を続けており、海外進出をはじめる業者も出ている。

中間処分場のキャッシュの源泉

 多くの中間処分場が多角的な経営をするようになっているので、キャッシュの源泉も多角的である。中間処分場の主な収入源は、
 1 収集運搬収入
 2 中間処分収入
 3 再生品売却収入
 4 仲介手数料(中抜き)収入
 5 コンサルティング収入
の5つである。
 4番目の仲介手数料収入は、直接廃棄物には触らず、業者間の取引を仲介することによって得られる手数料で、kgあたり1〜2円または立米500円程度であることが多い。収集運搬を受注して処分料金まで一括受納し、その一部を中抜きすることも、ある意味では手数料収入である。中抜き率(粗利率)は20〜30%と高いので、これが収入の大きな比率を占めている処分場もある。
 5番目のコンサルティング収入は、廃棄物処理の専門知識を生かして、排出業者のEMS(環境マネジメントシステム)をサポートし、ゼロエミッション(産廃排出量削減)、リスク低減、コスト削減、管理プログラム作成などの手助けをする事業である。廃棄物マネージャーを人材派遣する事業もこれに含まれる。これらの事業は廃棄物処理の知識産業化だと言える。すでにコンサルティング収入が事業収入の柱として成長している中間処分場もある。
 5つの収入源は、収益の構造がまったく異なるので、キャッシュフロー分析も別個に行うことが本来である。しかし、なんといっても、中間処理ならではの収入源は2番目の処分収入なので、この講義では主として処分収入のキャッシュフロー分析について解説していく。

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