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7-3 施設許可と検査

施設設置許可の実務

 廃棄物処理法第14条の処理業許可、第15条の施設設置許可を申請する際、施設の処理能力を算定するために必要な廃棄物の比重や単位熱量をいくつにするかという問題がある。とくに小規模施設については、比重や単位熱量の数値によって、許可申請が必要かどうか、判断が分かれることになる。
 国あるいは自治体が比重や単位熱量についてガイドラインを公表していれば、それに従えばいいが、公表された公式のガイドラインがないならば、許可申請者は民間団体が公表している数値を参考にしたり、実測データを用いたりして、処理能力を算定しなければならない。一般的には実測データを用いていることが多いようである。

 許可申請を受理した自治体は、処理能力の算定方法について公表しているガイドラインがある場合はそれに従って審査するが、ガイドラインがない場合は、申請された処理能力に科学的根拠がないと認められる場合を除き、処理能力の算定方法を理由に不利益な処分(不許可処分)をすることはできない。

 許可基準未満であるとして、申請のなかった施設について、基準以上で申請が必要ではないかという疑いを持った場合は、立入調査権に基づいて実証試験を行う場合がある。
 焼却施設の場合は、煙突の排ガス量と酸素濃度の計測を行う。そこから消費された酸素量を算出し、反応した炭素量を算定する。焼却物の炭素の組成比を設定すれば、焼却物の重量を逆算できる。燃焼状態は刻々変化するが、点火直後と燃えつきる直前の不安定なデータを除き、燃焼が安定している状態のデータの平均値として焼却能力を算定している。焼却物の重量もあらかじめ計測しているが、参考値として用いるにすぎない。
 破砕施設の場合は、破砕物の重量と体積を計測しておいて、連続運転時の通過時間を測定すれば、処理能力を計測できる。

処理能力算定に疑義があった場合

 処理能力の算定方法について、許可後に誤りに気づいた場合の取り扱いであるが、申請者の故意の数値の改ざんや重大な過失といった虚偽申請でなければ、行政庁は許可取消処分をすることはできない。許可取消しができない場合の更正の方法としては、変更許可申請を指導する方法、更新許可申請時に更正させる方法のいずれかを選択するが、一般的には更新許可申請時に変更させている。
 なお、許可した処理能力が過小である場合は、申請者側に不利益を生じているにすぎない。したがって、行政庁は、許可取消処分もしないし、許可内容を更正する指導もしない。申請者側から許可内容を更正したいと申し出があっても、一般的に受け付けていない。処理能力を変更すると、都市計画法、建築基準法など、他法令の許可にも影響があるので、処理能力に余裕があっても、許可を得た処理能力の範囲で運転するように指導している。
 許可した処理能力が過大であっても、許可した能力が出ないので、実質的な問題はない。ただし、大きな施設を有しているという外形により、委託者に誤解を生じさせ、過大受注の原因となりうるので、過大受注をしないように行政指導をすると同時に、許可内容を更正するように指導すべきである。

 行政庁は処分をしなくても、処理能力の算定方法を理由に、立地地域の住民が許可取消を求める行政訴訟を提起する場合がある。なんらかの公表されたデータを提出し、それと異なるデータを用いているから、処理能力の算定が誤っており、許可は無効であるという訴えになっている場合が多いようである。
 しかし、行政庁があらかじめ公表しているガイドラインがないなら、廃棄物の比重や単位熱量の実測値にある程度の幅があるのはやむをえないことであり、科学的根拠がある実測値に基づく申請なら、行政庁は許可しなければならない。
 許可申請者の虚偽申請(数値の改ざん又は重大な過失)、行政庁の裁量権の濫用又は逸脱(故意の見落とし又は重大な過失、違法な他事考量)がないならば、許可を取消すべき違法性はない。
 自治体ごと、あるいは処理業者ごとに処理能力算定基礎がまちまちであることをとがめて許可取消しを求めだしたら、国内の処理業者を全滅させなければならないことになる。

 もしも、申請者が処理能力を求める数値を故意に改ざんして、過小又は過大な許可を取得していたとしたら、単に虚偽申請というにとどまらず、公正証書原本不実記載罪という犯罪(刑法157条1項、懲役5年以下・罰金50万円以下)になる。行政庁の審査で虚偽申請が発覚し、許可されなかった場合にも、公正証書原本不実記載未遂罪となる。(刑法157条3項)

 処理能力の算定方法についてのガイドラインが存在しないことによる混乱を解消するため、国や自治体は法令や条例を整備し、あるいは科学的根拠のあるガイドラインを作成して公表すべきである。

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