I-Method

7-2 施設処理能力

処理能力のジレンマ

 許可証に記載された廃棄物処理施設の処理能力は、I−Methodによるどのバージョンの分析にとってももっとも基本的な指標であるが、実は廃棄物処理施設の設置許可対象を規定している廃棄物処理法施行令第7条には単位の統一性がなく、また採用されている単位に科学的根拠がないものがあるという根本的な欠陥がある。

<廃棄物処理法施行令第7条における処理能力の単位>

 1号 汚泥の脱水施設 立方メートル
 2号 汚泥の乾燥施設 立方メートル
 3号 汚泥の焼却施設 立法メートル、キログラム、平方メートル(火格子面積)が混在
 4号 廃油の油水分離施設 立方メートル
 5号 廃油の焼却施設 立法メートル、キログラム、平方メートル(火格子面積)が混在
 6号 廃酸又は廃アルカリの中和施設 立方メートル
 7号 廃プラスチック類の破砕施設 トン
 8号 廃プラスチック類の焼却施設 キログラム、平方メートル(火格子面積)が混在
 8号2 木くず又はがれき類の破砕施設 トン
 9号〜13号 単位なし
 13号2 その他の焼却施設 キログラム、平方メートル(火格子面積)が混在
 14号 単位なし
 なお、最終処分については、廃棄物処理法第15条第2号により、面積と埋立容量を許可申請書に記載することとされているので、体積による規制と判断できる。
 積替保管については、廃棄物処理法施行規則第9条第2項第6号により、面積、保管上限(体積)、高さを許可申請書に記載することとされているので、体積による規制と判断できる。

 以上のように、廃棄物処理施設の処理能力の単位は立法メートル、キログラム(トン)、平方メートルが混在している。とくに焼却施設については、3つの単位を併記したものと2つの単位を併記したものがある。
 廃棄物は品目によって比重、熱量、含水率などの性情が大きく異なるため、1つの処理施設に品目別の処理能力を記載した許可証も一般的に認められ、さらに体積と重量の処理能力を併記した許可証、法令とは異なる単位で処理能力を記載した許可証(たとえば破砕施設の処理能力を体積で記載した許可証)もあるなど、実務においても混乱が認められる。

 廃棄物の品目別比重については、いくつか公表されたものがあるが、環境省が公認した比重のガイドラインは存在しないため、自治体の裁量にゆだねられている。
 処理業者が自治体に提出する処理実績報告や、インターネット情報公開においても、単位がまちまちであり、統一性がない。
 さらには、処理業者の処理料金の設定も、重量と体積が混在している。

 単位の問題だけではなく、廃棄物の比重は不安定なものであり、排出時、運搬時、保管時、処理前選別時で、変化するため、一律に重量と体積を換算できないという問題がある。
 処理施設ごとに入荷する廃棄物の品目構成が異なる以上、正確な比重を求めようとするならば、最終的には処理施設ごとに実測しなければならないことになる。

 廃棄物処理施設の能力は体積で規制されているものが多いにもかかわらず、環境省が発表しているさまざまな統計は重量表示になっている。こうした統計類で体積と重量の換算値(比重)は公表されていない。最終処分場の残余年数の統計では、比重を1・0としている(つまり体積表示の残存容量を重量表示の単年度埋立処分量で単純に割っている。)ようである。国の統計からしてこのように比重は曖昧である。

焼却施設の処理能力の問題

 焼却施設の処理能力は、令第7条では廃棄物の体積、重量、火格子の面積の3つの方法で許可最低限が規定されているが、実はそのいずれも焼却施設の処理能力の単位としてふさわしくない。

 焼却施設とは、廃棄物の中の炭素などの物質を酸素と結合させる(酸化する)施設である。したがって、焼却能力を直接的に規定するのは、炭素量と酸素量である。
 炭素と酸素が結合すれば熱と二酸化炭素を生じる。したがって、熱量あるいは二酸化炭素量でも焼却能力を規定することができる。
 これらのうち、熱量を用いるのが一般的である。熱量による能力を重量又は体積による能力に換算する場合には、重量又は体積あたり熱量の安定している物質を用いる。たとえばボイラーの能力では、熱量を燃料となる灯油や軽油の消費量に換算して表示している。
 焼却物が液状物であれば体積に、固形物であれば重量に換算するの一般的だが、廃棄物は液状であっても固形状であっても、灯油のように熱量が安定していない。したがって、熱量を重量又は体積に換算した焼却施設の能力は、参考値の域を出ない。

 焼却施設の能力を物理的に規定するのは、燃焼室の大きさとブロアーの換気能力である。燃焼室の大きさ以上の廃棄物を投入することはできないので、これは1つの制約条件になる。供給される酸素の量を超えて燃焼させることはできないので、ブロアーの換気能力に酸素の消費率をかければ、焼却炉の物理的な限界を算定することができる。ただし、これはあくまで理論的な上限であって、実測するとかなりの誤差が生じる。酸素の消費率がさまざまだからである。

 廃棄物の熱量については、公式のガイドラインがないので、焼却炉メーカーごとにさまざまな実測値を用いて、処理能力を設計している。
 焼却炉メーカーが焼却能力の算定基礎として、許可申請書に添付しているデータは、定常運転時のものであり、最大燃焼時のものではない。瞬間的には定常運転時の1.5倍から2倍くらい燃える焼却炉は少なくない。しかし、そのような運転方法は現実的ではないし、炉の寿命を縮めてしまう。

破砕施設の処理能力の問題

 破砕施設の能力は、令第7条では重量で許可最低限が規定されているが、重量は処理能力の単位としてふさわしくない。

 破砕施設は廃棄物を物理的にせん断する装置である。その処理能力の設計は、せん断面とせん断速度によって行われる。せん断面積×せん断速度=せん断体積である。せん断面積は物理的なカッターやハンマーの大きさで決まる。一方、せん断速度は、モーターの出力(馬力)によって決まる。
 したがって、破砕施設の処理能力は体積で規定するのが科学的には正しい。
 もしも、重量で規定しようとするなら、破砕物の体積を比重換算して重量にしなければならない。
 比重は廃プラスチック類のような軽量物と、がれき類のような重量物では10倍以上異なるので、重量表示の破砕能力は、廃棄物の品目によって10倍以上異なってくる。
 しかも、同じ廃プラスチック類でも、硬質プラと軟質プラでは比重が異なり、運搬時に圧縮されたかどうかでも比重が異なる。
 木くずについても、柱、板、端切れなど、性状によって比重は大きく異なる。
 したがって、破砕機の能力を廃棄物の重量で正確に表示するということは不可能であるといわざるをえない。

 一般に、廃棄物は破砕機に投入される前に異物の選別工程を経るので、投入時の比重が小さくなることが多い。この場合、破砕機の実働能力は、設計能力よりも小さくなる。しかし、これは過大な能力の許可を得たということではない。比重の大きな廃棄物を投入すれば、設計能力を出すことができる。ただ、現業的には設計比重になかなか届かないということにすぎない。

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