I-Method

7-1 IM−Sとは

現地確認義務

 平成22年3月に閣議決定された廃棄物処理法改正案で、排出事業者の確認義務が強化され、現地確認、インターネット公開情報確認、自治体の優良性認定の確認などが、確認義務の内容として通知される流れになった。
 これは努力義務ではあるが、処理業者が不正行為を行った場合には、確認義務違反によって排出事業者に措置命令(撤去命令など環境保全上の措置を命ずる行政処分で、履行しなければ刑事罰がある。)が出されることがありうるから、直罰のない訓示規定だと安心してはいられない大きな改正だ。
 環境推進部や環境推進室といった環境部門を設置している一定規模以上の製造業者は、すでに契約時と年に1〜2回の現地確認を実施しているので、現状の取り組みが追認されたにすぎないが、現地確認を実施していない企業にとっては新たな義務が加わったことになる。

チェックリスト

 一般に、現地調査はチェックリスト方式で行われている。これは自治体の立入検査でも、民間の現地確認でも同じである。
 自治体が用いているチェックリストは要綱などでマニュアル化されているが、行政内部情報として公表されていないことが多い。
 民間のチェックリストは、行政、環境系公益法人、業界団体、コンサルタント企業などが、標準的なものを作成し、公表している。業界団体のものは会員限定の公表ということもある。廃棄物の品目や性状は業種ごとに異なるので、業種ごとに標準化することが望ましい。たとえば建設系の業種であれば、建設7品目(がれき類、ガラスくず及び陶磁器くず、廃プラスチック類、金属くず、木くず、紙くず、繊維くず)+建設汚泥に特化したチェックリストになっている。食品系、医療系、化学系など、業種によってチェックリストは異なってくる。業界団体のチェックリストを改良して企業ごと工場ごとに最適なチェックリストを作成してもよい。
 さらに処理施設の種別(破砕系、焼却系、脱水系、総合系など)ごとに作成してもいいが、あまり細かくしずぎても使いにくい。
 参考までに、全国産業廃物連合会が平成21年9月に発表した「建設系廃棄物の適正処理 産業廃棄物処理業者収集運搬中間処理チェックリスト」へのリンクを張っておく。
 建設系廃棄物に特化したものなので、一般的なものよりも使いやすいと思う。

 全国産業廃棄物連合会 建設系廃棄物処理業者チェックリスト

定量分析

 チェックリストはすで各種公表されているので、それを適宜組み合わせて用いれば十分で、新たに作成する必要を感じない。チェックリストが普及しているのは、有効で簡便だからである。

 これまでのセミナーで紹介していないが、実はIM−Bベースのチェックリストを作成しているので、それをダウンロード可能にしておく。

 I−Method Checklist

 このチェックリストは、チェック項目に重みづけをして点数化しているが、これは定量分析ではなく、点数分析である。このチェックリストの解説は後に行う。

 IM−Sがめざすものは、現地確認における真の意味の定量分析である。行政の立入検査なら、帳簿や記録の詳細な提示を命じられる。これに対して、なんら権限のない民間の現地確認で定量分析に必要なデータがそろうだろうかと懸念されるかもしれないが、実は公開データがあれば、定量分析に必要なデータはある程度そろっている。しかし、公開データに虚偽がないとは言えない。そこで現地調査で公開データの信憑性を確認するのである。すなわち情報公開と現地確認はセットであり、両者あいまってはじめて優良性を確認できる。どちらか一方だけでは信頼性の高い優良性診断はできない。
 その意味では、公開情報について自治体の優良性認定を受けていれば現地確認を免責すると言うのはちょっと安易だし、現地確認を写真で代替するというのも不十分である。情報公開を処理業者に義務付け、排出事業者には現地確認を義務付けて、はじめて信頼性が確保できる。
 IM−Sは民間の現地確認用なので、排出事業者が入手可能な公開データと、短時間の現地確認でも求められるレベルの現地データに基づいた定量分析を行う。

ライン

 IM−Sは、処理施設を並列的に検査するのではなく、処理フローあるいはラインに沿って検査していく。
 ラインは次のように単純化できる。

 (発生・排出前処理・排出)−収集運搬−(積替保管−収集運搬−)処理前在庫−処理−処理後在庫−有価物売却・残渣処分委託(−二次収集運搬)

 このラインの中で把握すべき、もっとも重要な数値はもちろん処理量であり、二番目は処理前在庫量と積替保管量、三番目は処理後在庫量である。
 これらを現地調査において定量的に把握してくのが、IM−Sの着眼点である。

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