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8-13 廃棄物輸出(2)


2 輸出手続

 バーゼル条約は、廃棄物貿易を原則として禁止する条約なので、この条約がすべての廃棄物に適用されるなら、廃棄物貿易は成立しないことになる。ところが実際には年間数千万トンのスクラップや廃棄物が輸出されている。その99%は、バーゼル法の規制も廃棄物処理法の規制も受けていない。
 これはバーゼル法の規制を受けない無害物であり、かつ廃棄物処理法の規制を受けない有価物だということになっているからだ。(厳密に審査したら、そうでもないのだが、検査は甘い。)
 現在は、製品輸出に関しては有害物質管理が厳格化されるのに対して、廃棄物輸出に関しては、資源循環を促進するため、国際的な静脈物流を発展させようという機運になっている。バーゼル条約にはそのような経済的な発想がないが、幸いなことに、適用範囲が有害廃棄物に限定されていたため、貿易の発展を結果としては妨げなかった。ただし、廃電気・電子製品や廃電池の貿易が盛んになるにつれて、廃棄物に含まれる有害物質管理の重要性が再び注目されるようになっている。

 バーゼル条約に沿って正規の廃棄物貿易手続きをしようとすると、たいへん面倒である。
 所管官庁は環境省だが、環境省には窓口がないので、経済産業省の輸出入手続きの窓口に申請される。申請書類は環境省に移送され、環境省から仕向国と通過国に通知され、承認を得たのち、書類が経済産業省の窓口に帰されて、外為法とバーゼル法が同時に許可になり、税関での通関が可能になる。輸出後に、輸出先国から処分済みの確認通知を得て、手続きが完了する。
 手続きが煩瑣なため、ほとんど利用されていないのだ。そればかりか、環境省の処理が人的に間に合わないため、手続きが省略されてしまうこともあると聞く。最近は日本で希少金属を精錬するための廃電子製品の輸入手続きが増えている。

 バーゼル条約未批准国(北朝鮮、ミャンマー、タヒチ、米国、アフガニスタンなど)との廃棄物貿易は規制を受けない。批准国から未批准国への輸出を包括的に禁止する1995年のBAN改正があるが、日本は批准していない。未批准国を迂回して、輸出禁止廃棄物が流通している懸念もある。

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