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8-10 建設リサイクル


1 リサイクル法の劣等生

 建設系廃棄物は、統計上、もっとも不法投棄が多いこととなっており、この現状は建設リサイクル法施行前も施工後も変わらない。
 この不法投棄統計にはいくつか疑わしい点がある。第一に、建設系廃棄物は業種特定がやりやすい。実際にはさまざまな業種の廃棄物が混合されている不法投棄現場であっても、解体系木くずは目立つため、全部が建設系とされてしまうことが多い。汚泥系廃棄物などは、業種特定が難しいので、ほとんど業種不明とされているが、実際には汚泥系廃棄物の不法投棄もかなり多い。第二に、不法投棄統計は重量ベースのため、比重の大きい建設系廃棄物は数字が大きくなる。これに対して比重の軽い廃プラスチック類などは、数字が小さくなる。
 こうした統計上の問題はあるが、建設系廃棄物の不法投棄が少なくないのは疑いない。

 建設系廃棄物の不法投棄をなくすために、わざわざゴミゼロの日(5月30日)に施行された建設リサイクル法だったが、その効果はかなり疑問で、個別リサイクル法の中で最低の劣等生と言わざるを得ない。

 建設リサイクル法が規制するのは、建設系廃棄物自体というよりも、解体工事である。
 建設リサイクル法は、ミンチ(未分別解体)や解体物の単純焼却を禁じている。しかし、その規制に実効性はなく、実際にはミンチも単純焼却も行われている。
 また、建設系廃棄物の運搬と処理を追跡する独自の仕組みもなく、廃棄物処理はすべては廃棄物処理法に任されている。この点、他のリサイクル法が、独自のシステムの構築を目指しているのとは大きく異なっている。

 唯一、独自のシステムといえるのは、解体業者の登録制であるが、これも相変わらず無登録の「一人親方」が多い。

2 下請けの問題

 建設業界特有の下請け構造が、解体工事にもある。建設工事の場合、元請事業者の受注価格に対して、末端の下請け業者(孫請け、曾孫請け)の施工価格は50%程度と言われてきた。最近は不景気によって受注競争が激化したことや、公共事業の一般競争入札の導入などの越境で、この比率は縮小していると言われる。
 しかし、解体工事に関して言えば、さらに著しいピンハネが行われており、末端の施工価格は元請けの受注価格の5分の1ということもある。
 解体工事費には廃棄物処理費が含まれており、木造家屋の解体工事では、元請の見積もりの半分が廃材処理費だと言われている。ところが、このような著しいピンハネが行われると、廃材処理費はほぼゼロになる。つまり、不法投棄しかなくなる。
 建設リサイクル法が規制すべきはこのようなピンハネだったが、規制はまったくされていない。

 廃棄物処理法の2010年改正では、建設系廃棄物の元請責任が明確化されたが、下請けに任せられるとの規定も残されており、元請責任をどこまで徹底できるか注目される。
 廃棄物処理法の建設系廃棄物に関する改正に伴って、建設リサイクル法でも元請責任を強化するという動きは今のところない。

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