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8-8 家電リサイクル


1 家電リサイクルの歴史

 経済産業省が所管する3つの個別リサイクル法のうち、家電リサイクル法はもっとも混乱が大きい。
 法律の施行直前には、かけこみ的な処分が急増し、処分のあてもなく集められた廃家電は、そのまま不良在庫となって放置され、不法投棄も横行した。
 法律の施行後は、リサイクル料金を顧客サービスとして徴収していない家電量販店から、大量の廃家電が流出し、不正輸出ルートに乗るという問題が起こった。
 金属の価格が高騰すると、家電スクラップも有償で取引されるようになり、とくに銅を多量に含むエアコン・コンプレッサーは高値で取引されたため、国内リサイクル工場から廃エアコンが姿を消すという問題が起こった。
 リサイクル料金は年々値下げされたが、入札方式ではなく、家電メーカーが恣意的にリサイクル料金を決定する仕組みのため、金属スクラップや中古家電の市場価格との連動性は小さかった。この価格差が、不正輸出ルートへの流出を増徴させた。

2 日本の家電リサイクルの特徴

 日本の家電リサイクル法を欧米の法律と比較すると次のような特徴がある。
 1 家電マニフェストによるリサイクルシステムの維持は指定法人1団体の独占である。
 2 実際のリサイクル事業は、独禁法逃れのために2グループの寡占とされている。ただし、リサイクル料金に差はない。この仕組みは経済産業省の行政指導によるところが大きく、限りなく公認カルテルに近い仕組みとなっている。
 3 法律施行時は4品目(ブラウン管テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機)限定で、すべての家電を包括的に規制していなかった。その後、液晶・プラズマテレビ、衣類乾燥機が追加されたが、包括的な法律からはほど遠い。
 4 RoHS指令(電気・電子機器特定有害物質の使用を制限するEU指令、家電リサイクル法に相当するWEEE指令と同時に公布)、REACH(EUの化学物質規制法)、PRTR(化学物質排出移動量届出制度)法など、国際的な有害物質規制との連動性がない。
 5 中古家電の流通システムが国内にはほとんどないため、年間2000万点とも言われる中古家電が輸出され、国内リサイクルシステムと競合している。

 国内の家電リサイクルシステムは、経済産業省の行政指導の下、家電メーカーや鉄鋼メーカーなど大手業者も参入して、大工場が作られる形で急速に市場が成熟した。この巨額の投資を回収するため、リサイクル料金はスクラップ市場との連動性よりも、コストベースで決められている。

 家電リサイクル法は、廃棄物処理法の特別法という位置付けになっている。このため、廃棄物処理法の有価物・無価物主義を踏襲し、有償で下取りした廃家電は廃棄物ではなく、中古品となり、家電リサイクル法の規制を受けない。有償買取された多くの家電は輸出されている。さらに、家電リサイクル法のルートに乗ったテレビなども、輸出ルートに流出している。この場合、廃棄時に貼られた家電リサイクル券がはがされ、他の売れないテレビに貼りなおされるといった不正が横行している。

5 パソコンリサイクル

 パソコンのリサイクルは、資源有効利用促進法による勧奨制度として運用されている。リサイクル料金の負担が必要だが、実際にはメモリーなどを増量して中古品として流通しているパソコンも多く、また液晶などの部品は高値で取引できるため、法による有償の規制が必要なのか疑問もある。
 日本だけではなく、新興国でも大量に廃棄されている携帯電話は、日本国内ではリサイクルに関する法律はないが、貴金属や希少金属を多量に含むため、有効活用の技術開発が進んでいる。中国やインドなど新興国から使用済み携帯電話を輸入する動きも広がっており、廃棄物処理法上の輸入規制緩和も行われた。
 多くの家電製品に計算チップや液晶が使われている現状では、パソコンと携帯電話だけを特別視することの意味は曖昧である。さらにパチンコ台などの業務用ゲーム機も電子機器として扱うべきである。

 欧米では、資源有効利用の観点よりも有害物質規制の観点から、包括的な廃家電規制が設計されている。資源有効利用の観点に偏っている現在のシステムでは、価格弾力性のない公定リサイクル価格と、変動幅の大きい資源価格が乖離してしまい、不正処理や不正輸出が増えてしまう。
 ドイツ法を真似た容器包装リサイクル法が帰国子女だとすれば、家電リサイクル法は日本らしい優等生になるはずだったが、国際感覚のない孤立法になってしまったといわざるを得ない。

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