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8-11 自動車リサイクル


1 自動車リサイクル法の特徴

 最後の個別リサイクル法となった自動車リサイクル法は、先行する他法の欠点をかなり意識している。
 第一の特徴は、リサイクル料金前払い、第二の特徴は電子マニフェストの義務付けである。

 リサイクル料金前払い(自動車購入時払い)は、家電リサイクル法施行前にかけこみ不法投棄が増加したことを意識している。
 前払いなら、廃車時に料金逃れの不法投棄が増加しないというものである。
 電子マニフェストは、家電リサイクル券が紙ベースだったため不正の温床となったこと、廃棄物処理法の電子マニフェストが勧奨制度のために普及しない現状を見てのことだろう。
 いずれも制度の運用としてはうまくいっているようである。

2 前払いの問題

 しかし、前払いにも問題がある。第一に、10年後の廃車時のリサイクルコストはわからないため、自動車メーカーが現状のコストを基にして決めているリサイクル料金に根拠はないといっていい。廃車時、リサイクルコストがかからなくても、前納したリサイクル料金は還付されない。
 第二に、自動車購入時の賦課では、ユーザーのリサイクル意識を喚起せず、実際には重量税が二重になったのと同じである。
 第三に、廃車されるまで前払いしたリサイクル料金を管理するためのコストがかかる。また、購入した債券のデフォルトなど、資金運用の失敗もありえる。
 第四に、輸出出中古車のリサイクル料金が還付される制度は、輸出偽装の温床になる恐れがある。

3 資源価格の読み違い

 自動車リサイクル法は、鉄の価格が戦後最安値だった時代に設計された。ところが、法律が制定された2002年には鉄価格が上昇基調になっていた。これを指摘する声はあり、筆者も著書の中で自動車リサイクル法の施行を凍結すべきだと警告したが、経済産業省は軌道修正できなかった。
 その後、鉄価格はさらに上昇し、リーマンショック前の2008年7月には、廃車1台6万円の根がついていた。リーマンショック後、廃車価格は0円になり、ようやく自動車リサイクル法が日の目を見た。
 ところが、2009年になると、価格低下からスクラップウ輸出が急増し、価格も順調に回復し、再び廃車は有償で取引されるようになっている。

 家電リサイクル法でも指摘したが、世界最強の自動車工業会主導でもっとも強固なシステムが作り上げられた自動車リサイクルシステムは、さらに価格弾力性がなく、鉄の価格がどう変動しようと、リサイクル料金が改定されることなない。無意味なリサイクル料金を徴収し、国債を買い続けている。

4 時代遅れの優等生

 自動車リサイクル法もまた、廃棄物処理法の特別法であるため、自動車シュレッダーダスト、エアコンのフロン、エアバッグのアジ化ナトリウムなどの廃棄物処理に主眼を置いている。
 しかし、自動車リサイクルは、中古車国内市場(オークション)、中古車輸出市場、中古部品市場を意識した包括的なものであるべきだ。
 とくに中古部品については、メーカーへの利用の義務付け、民間修理工場のネットワーク化などを推進すべきであるが、このような背策はほどんと見られない。
 規制対象外となっているオートバイについては、メーカーの自主的な取り組みが始まっているが、実績はほとんどない。
 自動車リサイクル法は施行時からすでに時代遅れの優等生だったと言うべきである。

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