I-Method

5-2 8つの公開情報


 優良化事業からは、8つの情報(公開7情報+付帯情報)が公開される。(事業の詳細は右リンク参照)
 1 会社概要
 2 許可の内容
 3 施設及び処理の状況
 4 財務諸表
 5 料金の提示方法
 6 組織体制
 7 地域融和
 8 遵法性・環境保全の取り組み
 1の会社概要とは、社名、本店所在地、役員名簿、資本金などのイニシャルであり、法人であれば登記簿、定款、会社HPなどでも公開されいるので、産廃情報ネットからの公開は便宜的なものである。(個人事業者の場合は他に公開情報がないことが多いので、公開制度は無意味ではない。)

 2の許可の内容は、許可証をスキャンして画像として貼り付けるのが一般的になっている。許可の件数が多い事業者の場合は、一覧表で公開している場合もある。許可の概要は、自治体が作成している処理業者名簿でも公開されている。

 3の施設の処理及び処理の状況は、施設の一覧表と処理状況の一覧表が公開されている。処理状況は、収集運搬、中間処理、最終処分別、廃棄物品目別、月別に集計された詳細なもので、過去3年分が公開される。これまでも自治体に報告が義務付けられていた処理実績報告書が公開されたのと等しい、非常に詳細な内容の公開情報である。

 4の財務諸表は損益計算書と貸借対照表が3期分公開される。業界からは1期分でも十分という意見もあったが、制度発足時の検討会の主幹となった長澤早稲田大学教授が、「石渡さんにトレンドを見るには3期分必要と聞いていたので、3期公開でがんばりました」と教えてくれた。
 残念なのは、売上高のない簡易な損益計算書を公開している事業者が少なくないことだ。簡易財務諸表は、有価証券取引法に基づく新聞公告の様式に準じたものだ。同法で簡易様式での公告を認めているのは、新聞公告料が高いためだが、ネット公開では料金の問題はないはずだ。会計原則(財務諸表規則)による財務諸表を公開すべきと様式を限定すべきだった。

 5の料金の提示方法は、業界から公開のもっとも抵抗のあった項目だと長澤教授から聞いている。検討の当初にはストレートに「料金表の公開」となっていたが、それではどうしても業界の同意が得られず、やむをえず料金の提示方法となったという。単純に料金だけを比較されて業者を選択されることになるのを恐れたからだ。このため、「個別見積もり」といった無意味な情報開示もある。
 実質的に料金表は非開示となったわけだが、これは産廃処理業界の実情をはからずも暴露している。産廃業界は料金の設定根拠が最も曖昧な業界の一つなのだ。とりわけ収集運搬業の料金設定の適当さは驚くばかりである。

 6の組織体制は、組織図や従業員数が公開される。組織体制は売上高についで重要な会計情報だ。この情報から、廃棄異物処理業が専業か兼業かがわかるし、事業間の比重も推測できる。さらに処理状況や財務諸表と組み合わせて、労働生産性を計算するには、組織情報が不可欠である。

 7の地域融和は、処分場を地域に公開する方法の公開で、CSR情報といっていい。

 8は環境省の制度では公開義務のない優良性認証項目であるが、自治体から優良性認証を受けるには必須の項目である。産廃情報ネットでは8番目の公開項目となっている。
 遵法性とは、過去5年間行政処分(改善命令、措置命令、業務停止、許可取消)を受けていないことを意味する。処分を受けたことは自治体のホームページから公開されていることが通例である。また、行政処分は他の自治体に連鎖したり、関連会社(役員兼務会社、出資会社)が連座したりする。
 環境保全への取り組みは、ISO14001やエコアクション21(EA21)などの環境認証を受けていることを意味する。これらの認証を受けている場合、環境報告書(CSR報告書など名称はなんでもいい。環境レポートでもいい)の公開が義務付けられている。
 EA21は環境省が推奨する簡略版ISOといった内容になっており、認証取得の初期費用も比較的安く、実践も容易で、中小企業が多い産廃処理業者が取得するのに適している。

 このように公開情報は、他の業界に例を見ないきわめて優れた制度設計となっており、ほとんどガラス張りの公開情報制度といっていい。このことは逆にこの制度の普及の妨げになっているともいえる。
 残念ながら各都道府県の産業廃棄物協会の役員クラスなど、業界を代表する大規模業者だけに限っても、この制度が完全に普及していない現状である。

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