I-Method

3-4 リターンがない

第2の商品特性 リターンがない

 通常の商品では、代金を払って商品の現物やサービスを受け取る。このため、商品の品質を手元で確認できる。ところが廃棄物は代金と廃棄物を相手に渡すだけで、帰ってくるものは何もない。このため、商品の品質を手元で確認するすべがない。郵便や宅配便でも同じではないかと思うかもしれないが、荷物が相手に届かなかったらクレームが来る。しかし、廃棄物が不法投棄されてしまっても、行政や警察が摘発しないかぎり、クレームが来ることはない。
 「いってこい」でななく、リターンがない「いっていって」のため、排出企業にとっては産廃処理はマル投げになりやすく、受注業者が不正行為をしてもわからない。この問題を解決するには、リターンを人為的に作り出さなければならない。
 その一つのアイディアが米国の制度を真似て導入したとされるマニフェスト(産業廃棄物管理票)の回付である。これによって、いちおう書類が何枚かリターンするようになった。しかし、書類だけのことであり、偽造スタンプを押されても確認のすべがない。
 このため、次の廃棄物法改正では、排出企業に現地確認義務を課すことが検討されている。現地確認は商品の品質を確認するための究極の方法であり、現在でも、年2回程度の現地確認を行っている大企業は少なくない。またすでに条例で現地確認を義務付けている自治体もある。すべての排出企業が現地を確認しなければならないのか、一定の規模以上の多量排出事業所に限定するのか、現地確認先は契約関係がある一次委託先(中間処理施設)だけでいいのか、契約関係のない二次委託先(最終処分場)も含めるのか、現地には行かず写真などの資料で代替してもいいのか、代理人やコンサル企業による確認でもいいのか、詳細はまだわからない。

リターン欠如を代替するトレーサビリティツール

 廃棄物関連のコンサル企業では、これまでもさまざまなトレーサビリティツールを開発し販売してきた。GPSによる車両位置追跡、WEBカメラによる処分場画像放映、気象衛星画像を暗号化した写真撮影位置・時刻認証システム、バーコードやICチップを使った宅配便と類似の通過地点管理システムなどである。マニフェストの偽造や後付を防止することができる電子マニフェストも開発されて久しい。
 しかし、車両や処分場単位での監視できても、すべての廃棄物の行方を24時間監視することは不可能である。また、焼却や破砕などの処理をしてしまった廃棄物は、もはや排出企業の紐付きで追跡することが物理的に困難になる。

 廃棄物処理にはリターンがないので、廃棄物の行方を追跡し、処理の品質を監視するシステムがどうしても必要になる。だが、どんなに監視技術が進展しても、廃棄物処理にリターンがないという問題を根本的に解消することはできない。それでも、何も確認しないよりはずっとましである。どこまでやるかは法律の規制というよりは、企業の姿勢と時代の要請によって決まるというべきである。

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