I-Method

1-2 劣化型構造化

再委託構造

 不法投棄のもう一つの原因である下請け構造あるいは再委託構造は、もっと複雑である。
 どの業界にも特有の下請け構造があり、どの業界の構造もそれぞれに問題を抱えている。元請から下請けに向かって、業務内容が専門化、特殊技能化、地域化していく特化型構造化の場合は、業界の階層化には必然的な面もある。たとえば、自動車メーカーが専門化した機械メーカーや部品メーカーに発注する場合がこれにあたる。ゼネコンや総合商社は、受注契約の窓口業務に徹し、事業や施工段階ごとに専門化した会社に、大半の事業が二次委託されている。
 古紙や金属スクラップを扱う業界では、地場の古物商・廃品回収業者が小さく集め、大手問屋が大きくまとめて製紙工場や古紙輸出を扱う商社など大口の需要先に販売するボトムアップ型構造化ができている。

 産廃処理業界では、地場の小さな収集運搬業者が集めた産廃が、積替保管施設、中間処理施設を経て、大規模な最終処分場に集約されて行くボトムアップ型の流れがある一方、営業力のある大手処理業者が最初から大きく集めた産廃が、小口に分散されて再委託される特化型の流れも並存している。この再委託構造に、劣悪な処理業者、無許可のダンプ運転手(一発屋)、無許可の最終処分業者(穴屋)、違法な流出を仲介するコーディネーター(まとめ屋)が介在することにより、不法投棄の闇の構造が構築されていた。

中抜き

 再委託構造によって介在する複数の業者がそれぞれのマージンを取ればコスト高になる。物流業界をはじめ、どの業界でも構造化によるコスト高が問題となっている。
 解体業や産廃処理業では、再委託のたびに中間マージンが抜かれて、現場の処理費がどんどん低下していく。こうした仲介業者のマージンを中抜きと呼んでいる。中抜き率は1社で2割以上になることが珍しくなく、これが何度も行われると、末端の処理費は適正処理価格の下限を割り込み、不法投棄や無許可処理をせざるを得なくなる。これが劣化型構造化である。処理費が中抜きによって低下し、下請けに行くほど設備も技能もない劣悪な業者となり、ついには違法処理を行う無許可業者になっていくという、解体業や産廃処理業の劣化型構造化が、不法投棄の原因となっていたのである。
 2000年以降、産廃処理業界を取り巻く環境変化によってオーバーフロー構造が解消に向かったのに対して、劣化型構造化の問題は今もほとんど解消しておらず、この構造を原因とする不法投棄もなくなっていない。

再委託代替ビジネス

 再委託がすべて悪いのではない。廃品やスクラップの回収、古着回収、プラスチックのリサイクルなどのリターン構造を構築するには、地場で小さく集め、大きくまとめていく構造が効率的である。国際資源循環の時代には、回収の範囲、スケールの経済性が必須である。営業力のある商社的業者が大口に受注して、適正処理できる複数の処理業者に分散して二次委託する構造が適している産廃もある。たとえば化学系廃棄物のように、受注して現物を検査してからでないと処理方法が決まらない廃棄物では、専門化した業者への再委託を禁止したら処理困難物が滞留してしまう。
 しかし、現在の廃棄物処理法は処理施設のない商社やコンサル企業の受注を一律に受託違反として禁止し、再委託は突発的な事情で排出者の同意を得た場合を除き、再委託も一切禁止である。しかもこれらの違反を処理業者が行えば、一発許可取消という厳しい基準になっている。商社業務や再委託の禁止は、産廃処理業界に適正な構造化が進展する妨げとなっており、それがかえって劣化型構造化を増長させる皮肉な結果ともなっている。
 ただし、実際には、営業力のある大手の収集運搬業者や処理業者が、実質的な商社的機能や二次問屋機能を果たしている状況もしばしば見かける。また、処理の受注はせず、マッチング(処理業者の紹介や仲介)や、処理業者のデータベース提供だけを行っているコンサルタント企業もある。これら商社業務や仲介業務の法的な位置付けは曖昧で、地方自治体ごとに運用はまちまちである。

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