I-Method

3-3 廃棄物とCSR

廃棄物をプラス評価にする方法

 消費者に環境意識が浸透した結果、商品の環境性能を訴えることが、自動車産業や住宅産業の主流になっていることは、テレビコマーシャルを見れば一目瞭然だし、トヨタプリウスが、政策的後押しがあったとはいえ2009年の国内売上シェア一位になったことでもわかる。開発力もさることながら、人気を逃さずに対応できる生産力を持っているトヨタの底力には脱帽である。他の一部の自動車メーカーで、巨費を投じて開発した環境車がせっかく人気になったのに、増産する体制が整わずに足踏みしているのとは大違いだ。
 ほとんど例外なく、大企業はISO14001の認証を取得し、環境報告書やCSR報告書を毎年作成している。その主要なコンテンツは、二酸化炭素の削減と省資源・省エネである。そのいずれにも廃棄物のリサイクルが大きくかかわっている。多くの大企業は、2003年ころまでにゼロエミッション(廃棄物の最終処分1%未満)を達成したが、そのころは高コストのリサイクルであることが多く、また再生資源としてほんとうに売れているのか未確認であることも多かった。
 その後、廃棄物の排出量の低減(リデュース)、廃棄物の社内循環利用、再生資源の買戻し(リターン)、海外で再生された資源の再輸入など、さまざまな取り組みが進展し、廃棄物処理・リサイクルのコスト管理も厳しくなった。

 廃棄物の中には売れる資源となるものも出てきたが、まだまだ全体としてはマイナス価格の廃棄物が多い。
 しかし、廃棄物の発生が企業として不可避的なら、その処理をマイナスとは捕らえない積極的な考え方も出ている。たとえば、原材料コストを製品だけではなく、廃棄物にも付加するような会計処理も発案されている。廃棄物を発生させることのムダを処分費のコストではなく、原材料費のロスとしてとらえようということである。
 廃棄物を減らし、それでも発生する廃棄物は資源化することの意味を積極的に評価するようになれば、廃棄物はたとえ処分費がかかってもマイナスの価値ではなくなり、企業のCSRを評価するための重要な指標になる。
 たとえば自動車にどれだけ再生部品が使用されているかを指標として表示し、それを環境性能の重要な要素と捉えている国もある。
 日本では名刺、カタログ、社内資料などに古紙を多様していることを環境配慮企業の象徴とする伝統が続いてきた。ただ、それがあまり行き過ぎて古紙が不足し、古紙配合率偽装といった問題が生じたことは残念である。古紙再生は溶解や漂白の工程が長くなり、かえって環境を汚染するという問題もあるため、古紙100%の再生紙製造を中止すると表明する製紙メーカーも出てきている。製紙業だけではなく、あらゆる製造業で、廃棄物再利用率が環境性能として表示されることになれば、廃棄物は環境性能を誇示するために必要な要素となり、マイナス価値の商品ではなくなる可能性がある。

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