I-Method

I−Method WEBセミナー開講

1-1 オーバーフロー構造

iメソッドの起源

 私は現役産廃Gメン時代に、不法投棄に関与した数百社にのぼる産廃処理業者の検査を行い、その多くの業者で会計帳簿検査を実施した。その結果、不法投棄の主たる原因の一つが産廃処理業者のオーバーフロー構造であり、もう一つが元請から下請けへ再委託構造(ピンハネ構造)であると確信するにいたった。
 この分析法の着眼点は、オーバーフロー分析につきると言っていい。

 オーバーフロー構造は、ミクロとマクロの2つの観点から論じることができる。ミクロのオーバーフロー構造とは、産廃処理業者が処理能力を著しく上回る受注、すなわちオーバーフロー受注をしているということである。その結果、収集運搬業者の積替保管施設や中間処理施設の保管場に大量の産廃が積みあがり、これが不法投棄現場や無許可処理現場への流出につながる。最終処分場の残存容量を超えたオーバーフロー受注は、無許可拡張現場や無許可第二処分場に埋め立てられる。

最終処分場不足論 VS 中間処理施設オーバーフロー論

 マクロのオーバーフロー構造とは、産廃処理業界全体として、許可施設の処理能力が需要を満たせない状態である。この場合、必要悪として不可避的に不法投棄や無許可処理が発生してしまう。かつては「最終処分場不足論」が台頭していた。これは国の発表する統計で、全国の最終処分場残存容量が年々減少し、とくに首都圏では残余年数が2年を切る危機的状況だと報告されていたからである。「最終処分場不足論」は常識化しており、不法投棄に関与している業者すら「最終処分場が足らないんだから、俺たちが不法投棄をやらないと困るだろう」と開き直るありさまだった。
 しかし、現場を見るかぎり、どの最終処分場にも言われているほどの逼迫感はなく、行列のできる最終処分場など、よほどの低料金でなければ見かけなかった。地価が高い関東で最終処分場が足らないのは当然のことで、首都圏の産廃は東北などの最終処分場に向かっていた。
 しかし、最終処分場の新規許可が難しくなると、東北の最終処分場が次々と閉鎖され、一部の処分場では、無許可拡張型の巨大不法投棄事件が発生することになった。

 私が見たところ、オーバーフローは最終処分場よりも上流に位置する中間処理施設や積替保管施設で起こっている現象だった。中間処理施設でオーバーフローした産廃は、焼却、破砕、脱水などの適切な減量化処理や再生処理をほどこされることなく、そのまま不正ルートに流出する。これが産廃処理業界全体のオーバーフロー構造を招来していた。もしも中間処理施設で適切な減量化処理や再生処理がほどこされれば、産廃は10分の1に減量化される。そうなればマクロのオーバーフロー構造は解消し、最終処分場の逼迫も解消する。これが「最終処分場不足論」に代わる「中間処理施設オーバーフロー論」だった。

オーバーフロー構造の転機

 2000年以降、産廃処理業界では、大規模焼却炉や大規模破砕機など処理施設の大型化が進展した。また、個別リサイクル法の体系が完成し、資源価格高騰を追い風として、リサイクル施設や中国向け資源ごみ輸出商社の業績が急伸した。こうして、中間処理段階のマクロのオーバーフロー構造は2001年ごろから転機を迎え、分野ごとのばらつきはあるものの、全体として徐々に改善に向かった。大企業を中心としてゼロエミッションへの取り組みが進んだ結果、最終処分場の需要量は半減し、新規許可が難しい状況下でも、残存容量、残余年数はとも増加傾向に転じた。こうした流れのなか、不法投棄の統計量も半減した。

先頭のページ 前のページ 次のページ 末尾のページ
I-Method Webセミナーへのへのご意見・ご提案・ご感想をお待ちしております。