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3-2 再資源化の意味

再資源化の経済学

 廃棄物をプラス価値に転じることができれば、廃棄物処理に価格競争だけではなく、品質競争を持ち込むことができる。
 一番ストレートな方法は、廃棄物をリサイクルし、再生資源として販売することである。ただし、初期段階のリサイクルでは、リサイクルは、かえってコスト高になっていた。

 リサイクルのコスト Cr=(一次収集運搬費+中間処理費)+(リサイクル処理費+商品物流費)+(二次収集運搬費+残渣最終処分費)

 リサイクルでは、廃棄物の処理が3回行われることになるので、当然コスト高になる。このコストを再生資源の売却で補うことができなければ、リサイクルはお題目だけのものになってしまう。
 再生資源の売却収入SrがCrよりも安ければ、リサイクルは通常の製造業のような意味で付加価値を生み出せない。この場合には、処理費を請求するリサイクル(逆有償リサイクル)となり、従来の中間処理業と業態的には大差がない。というより従来型の中間処理でも売れるものは売っており、その比率は、70〜80%になっている。統計上、産廃のリサイクル率が50%程度で足踏みになっているのは、計算の分母(産廃総排出量)の中に汚泥や家畜のし尿(その90%以上は水)が大きな比率を占めているからである。もしも分母に脱水後汚泥の数値を入れれば、産廃総排出量は1億トン以上少なくなり、産廃のリサイクル率はもっと高くなる。

 Sr>Cr、すなわち有償リサイクル(廃棄物を資源として購入するリサイクル)を実現するには、売却価格の上昇、処理コストの低減、残渣率の低減(歩留まりの向上)などの改善を同時に図らなければならない。
 再生資源価格は、バージン資源価格と連動するもので、材料系リサイクルではバージン資源の3分の2、燃料系リサイクルでは石炭価格とのカロリー換算比較で3分の1程度で推移している。2001年ころからの資源価格の上昇はリサイクルの採算性を大きく向上させてきたが、2008年後半のリーマンショック以来、価格は不安定になっている。しかし、長期的には資源価格は上昇傾向にあると見られている。
 リサイクルコストは、技術革新による低下が著しい。かつてはプラスチック1キログラムを再生するのに、石油数リットルの燃料を要すると揶揄されてきたが、現在では回収資源が投入資源を上回るレベルになっている分野も増えている。したがって、リサイクルはエネルギー収支上は無意味だと一括して批判するのは間違いである。技術革新のスピードは速いので、数年遅れで発表される統計値では、先端の動きを説明できない。
 いずれにせよ、リサイクル産業は成熟すればするほど山元産業化し、資源の国際価格に影響される業態となるので、従来の産廃処理業のような原価主義の価格設定ができなくなる。この価格決定の違いにどう対応するかが、リサイクル投資の成否の鍵になる。 

資源ごみ輸出

 資源ごみ輸出は、リサイクルの現場を中国などアジア諸国に移した業態であり、輸出コストを現地の人件費の低減で補うことで採算を取っている。今のところ、人件費低減のメリットが大きいため、プラスチックリサイクルなどでは、国内リサイクルよりも輸出の価格競争力が圧倒的である。しかし、アジア諸国の人件費は上昇傾向にあるため、この状況がいつまで続くかはわからない。また、輸出は国内リサイクルよりも国際価格に影響されやすく、国内法、輸出先の国内法、国際法の3つの法律がかかわることによるリスクもある。
 中古家電輸出は、資源ごみ輸出とは異なる業界のように見えるが、実は中古家電輸出価格は、新品家電価格ではなく、金属スクラップ価格に連動する傾向がある。それは中古家電が現地で解体されて金属リサイクルに回されることがあることとと関連している面もあるが、むしろ国内の資源調達で、中古家電輸出業者が玉(ぎょく)を確保するため、家電リサイクル施設(材料リサイクル)よりもやや高い値付けをする傾向があるためである。

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