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4-4 処分先2

同業の中間処理施設への再委託

 中間処理施設でオーバーフローした廃棄物の多くは、最終処分場ではなく同業の中間処理施設へ再委託される。
 未処理の廃棄物を再委託することは法的に禁止されているが、収集運搬だけ受注したように書類を作成し、料金は処分費込みで受納する方法が、今でも広範に行われている。

 同業者から廃棄物処理の再委託(横持ちと呼ばれる)を受注する営業は、同業者営業と呼ばれている。同業者営業は、特定の提携業者から、ロットのまとまった廃棄物を定期的に受注できるので、営業経費を節約できる。同業者営業を専門にするなら、営業マンは社長一人、あるいは同業者に顔がきくベテラン営業マン一人で十分である。そこで実際、同業者営業専門(再委託受注専門)の業者が存在し、事実上、提携先業者の第二処分場、あるいはストックヤードのように機能していた。

 同業者営業は下請けのようなものなので、処理費が元請からピンハネされる。これは「中抜き」と呼ばれ、20〜30%のピンハネ率が通例となっていた。中抜きを2回やられると、処理費は半額以下になる。これはもはや適正処理が困難な水準であるため、中抜きを2回やられた産廃は不正ルートに流出することになった。
 再委託が禁止されているのは、このような流出を防止するためである。

偽装リサイクル・不正輸出

 本来は市場価値のないリサイクル製品を売れたことにすれば、廃棄物処理法の適用を切断することができる。廃棄物かどうかの判断は、訴訟では総合主義が採用されているが、行政の実務では有価物主義がとられているので、偽装売買で書類上有価物になれば廃棄物ではなくなる。
 偽装には関連会社(しばしば子会社)との偽装売買を行う場合と、提携会社に裏金で処分費を支払う場合がある。

 関連会社との偽装売買では、廃棄物(売れないリサイクル製品)はヤードにそのまま置かれていて、帳簿上だけ名義が変わる場合もある。提携会社に裏金で処分費を支払う場合、運搬費、検査費、清掃費などの費目を別立てで支払うことが一般的である。架空の建設工事など、一見しただけではわからない費目を使っている場合もある。架空工事は発覚すれば脱税である。このほか、売れないリサイクル製品の買い戻し特約を事実上の処分費として充当している場合もある。
 不正輸出の場合も、運搬費や検査費を別立てにして有価物を偽装することが広範に行われている。たとえば、処理費がトン3万円かかる廃棄物をトン2万円で輸出し、トン5万円の運搬費や検査費を別立てで請求するといった方法である。
 このほか、輸出では40フィート・コンテナやベール(圧縮梱包物)が使われるため、コンテナの奥のほうや、ベールの中のほうに不正な廃棄物を混入させるという手口も使われている。

残土処分場

 建設汚泥は廃棄物処理法の適用があり、建設残土は適用がない。ところが、建設業界では両者を建設発生土として一括されている。汚泥は一般に残土よりも含水率が高く、粒度が小さい。また、汚泥はセメント、ベントナイト、石灰、石膏などの固化剤が混入された状態で排出されることが多い。しかし、残土でもやわらかい場合は石灰や石膏を混ぜている。
 汚泥と残土の境界が曖昧なため、汚泥処理業界では残土処分偽装が広範に行われていた時代があった。さらに汚泥や残土に建設廃材など他の廃棄物をブレンドする偽装が行われることもあった。これは業界で「あんこ」と呼ばれていた。
 廃棄物処理法施行前には、工場の廃棄物や建物の解体物は現場に埋め立ててしまうことが多かった。また、火災現場の廃棄物も、その場に埋め立てられていた。このため、都市部の建設工事で地盤を掘削すると、過去の廃棄物が出てくることが多い。東京では、江戸の旧市街があった皇居の東側地域に、数十メートル下まで百年以上前の廃棄物が火災年代ごとの層状になって埋まっている。
 「あんこ」は、こうした都市部の掘削残土に偽装する手口で、「B級残土」と呼ばれることもあった。しかし、よく調べれば混入した廃棄物の廃棄年度がわかる。廃棄物処理法施行(1972年)以降のものであれば、違法な混入ということになる。

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