I-Method

4-3 処分先

オーバーフロー受注した産廃の処分先

 I/O分析の目的は、オーバーフローした廃棄物が、最終的にどこにいったかを追求することである。
 この追求を、警察ならばダンプの追跡で行ってから、令状を取って帳簿を押収する。しかし、I/O分析では先に帳簿でお金の流れをつかんでから、現場を押さえる。行政は令状をいちいち取らなくても、立入調査権、証拠押収権、報告徴収権があるというメリットを生かした方法である。ただし、証拠押収権は限定されたものであり、警察の押収のように帳簿を全部押収するというわけにはいかない。また、証拠提出を拒否された場合には、その場で強制することはできず、報告徴収権を行使し、無回答に対して罰則を適用することになる。

 中間処理施設がオーバーフロー受注した廃棄物の主な行き先は5つある。
  1 最終処分場
  2 自社処分場
  3 同業の中間処理施設
  4 偽装を含むリサイクル・輸出
  5 残土処分場

 これらはいずれも、通常の処分先と同じである。ただし、オーバーフロー受注した廃棄物の場合は、これらの処分先でさまざまな問題を生じ、それが不法行為環境汚染につながる。

最終処分場への処分

 廃棄物がオーバーフローしても、最終処分場に行くなら問題ないと考えるかもしれない。だが、オーバーフローした廃棄物は適正な中間処理がされていないため、最終処分先で問題を生じる。
 適正な中間処理とは、前処理としての分別と、本処理としての焼却、破砕、脱水、中和などである。

 分別には手選別と機械選別があるが、手選別には人員的な限界、機械選別には性能的な限界がある。したがって、オーバーフローした廃棄物は選別が手抜きされるか、まったく選別されない。この結果、最終処分される廃棄物に埋立禁止品目や有害物質が混入するリスクが増大する。とくに周辺環境からの隔離が不十分な構造でよいとされている安定型最終処分場に、安定5品目以外の品目が埋め立てられると、さまざまな問題が発生する。

 本処理は基本的に機械処理であるが、オーバーフローした廃棄物は本処理されずに最終処分場に行くことになる。
 つまり、オーバーフロー施設では、分別も処理もされない廃棄物が最終処分されるということになる。
 ただし、未処理・未分別のままでは目立つために、建設重機(ブルドーザーやバックフォー)のクローラ(キャタピラ)で踏み潰す処理が行われることもあった。これを業界では重機破砕、あるいは「揉む」といっていた。
 よく揉まれた廃棄物は排出されたときの原型がなくなるため、遠目には破砕処理されたように見えるが、近づけば適正に分別・破砕された廃棄物との違いは歴然だ。
 未処理・未分別の廃棄物、あるいは重機破砕物はかさばるため、これが大量に埋め立てられると、最終処分場の寿命を縮める一因になる。また、安定型最終処分場へ未処理・未分別廃棄物の埋め立ては、単なる法令違反(品目違反、厳密には無許可の事業範囲変更)というにとどまらず、火災、硫化水素、塩化水素、一酸化炭素などの有毒ガスの発生、地下水汚染、悪臭など、さまざまな環境汚染の原因となった。

自社処分場への処分

 従来、中間処理業者が排出する処理残渣(燃え殻、破砕物、中和物)などは、中間処理業者が新たな排出者になるものと解され、平成6年の厚生省通達(平成6年2月17日衛産第20号)でも、この解釈が追認されていた。
 この結果、困った矛盾が起こった。
 中間処理業者が許可基準未満の小規模自社最終処分場(従来の基準では管理型1000平方メートル未満、安定型3000平方メートル未満)を設置した場合、中間処理業者は最終処分場の許可をえることなく、中間・最終の一貫処理が出来てしまうことになるのだ。
 このような疑問符のつく解釈が公認されてしまった結果、中間処理施設が設置する小規模自社最終処分場が次々と設置され、その斡旋を専門にする不動産ブローカーも登場した。さらには自社処分場を偽装した不法投棄も登場し、自社処分こそは廃棄物処理法の最大の抜け道といわれるようになった。

 この名高い悪法ならぬ悪通達は、平成17年の環境省通達(平成17年9月30日環廃対発第050930004号・環廃産発第050930005号)でようやく修正され、中間処理施設が自社の最終処分場に残渣の埋立を行う場合は、自社処分にはあたらず、最終処分業の許可が必要だとされた。
 廃棄物処理法最悪の抜け道はついに閉ざされたが、自社処分が脱法行為となる問題自体は、まだ続いており、法改正のたびに規制強化が検討されている。また千葉県をはじめ各県が独自の条例で自社処分を規制することも増えている。
 今後は自社処分を廃棄物の社内有効利用の観点から推進していくことも検討すべきである。

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