I-Method

4-1 IM−Cとは

IM−C(iメソッドクラシックバージョン)とは

 IM−C(iメソッドクラシックバージョン)は、石渡が現役産廃Gメン時代の1999年に独自に開発した産廃処理業者の会計書類検査を中心とした立入検査手法を発展させたものである。その原型は、「ノーカット版産廃コネクション」のコンテンツの一つとして公開予定の「初期レポート 書類検査マニュアル」としてまとめられている。ただし、簿記・会計の知識を必要とするため、千葉県でもほとんど活用されなかった。
 そこで千葉県のみならず、他の地方自治体や、さらには民間企業にも、この手法を広く活用してもらうため、広報課の勧めもあって、書類検査マニュアルだけではなく、総合的な不法投棄対策マニュアルとしてまとめた本が「不法投棄はこうしてなくす 実践対策マニュアル」(岩波ブックレット bT98 2003)だった。この本はタイトルのとおり実践的な内容で、実務者の間で教材として絶大な人気があった。増刷が繰り返されており、現在も入手可能である。
 IM−Cは、まさにこの本で紹介された分析法にほかならず、本稿はこの本の第2章「財務分析による検査マニュアル」のダイジェスト版になっている。書籍よりコンパクトになったので、かえってわかりやすいかもしれない。

IM−Cの特徴

 IM−Cという呼び名は現在から振り返ってつけたものであり、当時はもっと具体的にI/O分析(インプット・アウトプット分析)と呼んでいた。
 この分析の主眼とするところは、産廃処理業者、とりわけ中間処理業者のインプット(受注量)とアウトプット(外注量)のマテリアルバランスを検査することである。
 これは中間処理業者がオーバーフローして受注した廃棄物の不正ルートへの流出が、当時の不法投棄問題のコア(核心的)な原因であるという確信に基づいている。

 IM−Cは、オーバーフロー受注の発見に集中した定量分析であるため、他の問題、たとえば焼却炉の燃焼温度などは問題視しない。ただし、焼却によって廃棄物がどの程度縮減するかというデータは、I/O比率を求めるための基礎的な数値になる。焼却温度が高ければI/O比率が高くなるという意味で、焼却温度は間接的に関係してくる。オーバーフロー受注している施設では、廃棄物の分別がずさんになったり、焼却炉の運転が乱暴になったりする。その結果として、排ガス中の一酸化炭素や塩化水素濃度が上昇し、飛灰(ばいじん)にダイオキシン類が混入するかもしれない。これは重大な環境問題を引き起こす因子となる。しかし、それは結果であって原因ではない。
 破砕施設も、脱水施設も、固化施設も、着眼点は同じで、I/O比率を求めるために、その能力や実績を検査する。

 違法な受注や外注は帳簿や伝票に載っていない場合がある。いわゆる二重帳簿である。IM−Cは、二重帳簿の兆候をマテリアルバランスの乱れとして検出する。簿外取引を見破る手法としては税務調査に似ているので、I/O分析を税務的検査と呼ぶこともあった。
 税務的検査を実施するためには会計や簿記の知識が不可欠になるので、私はすべての検査チームに税務、財務、監査などの経験者を1人配置してほしいと要望していた。残念ながら、これは実現しなかったが、実務経験者でなくても、複式簿記の勉強を独学でやれば、帳簿組織を点検できるようになる。

 IM−Cは、後のベーシックバージョンやプロフェッショナルバージョンの基になるものであるが、決して後のバージョンに見劣りするものではない。IM−Cは立入検査手法として開発されたものなので、職権に基づいて財務諸表、会計帳簿、廃棄物処理法の関係書類のすべてを検査できるということを前提としている。その意味で、むしろ分析に使用する資料を限定した後のバージョンより高度な内容を含んでいる。クラシックバージョンと命名はしたが、実務的にはインスペクションバージョン(査察バージョン)と呼んでもいい。

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